補完の幕間④:機械兵士とかつての少年兵
「俺…の…せいだ。ううっ。俺が…兵士だから、戦争屋だから…ネクトの坊主を…ディオメを…不幸…に…する…だ。うううっ。」
泣き啜りながら、泥酔しているアラウス。つい、先程まで戦勝会を開いたが、彼は人工アルコール酒を飲み過ぎて、泣き上戸になっていた。
ヘルメやアレンら中堅の兵士たちはそんな隊長の弱音を長年の経験で慣れているのか、泣き言に付き合わず、さっさと寝床に戻った。
ロードはアラウスのあられもない姿を見て、心配そうにおどおどと動き回るが、ディオメだけはそんな彼を落ち着かせ、アラウスに対しては毛布を掛けて、彼の頭を撫で、宥めた。
「ごめんな…ディオメ…情けねぇ…隊長で…苦労…を…掛けてばっかで…」
「はいはい、隊長。僕は死んで遠くには行きませんよ。」
「大変だったんだな。アラウスも、ディオメも、みんなも。」
ロードはこの宴でアラウスについて色々聞いていたようで、特にヘルメやアレン、ディオメがアラウスと出会った当初のことは熱心に夢中になった。
「敵兵だったアレンたちグルカ兵を救い、ディオメの父親の仇を獲った。そんな勇敢な男がまさかこんなに思い詰めていたなんて。」
「隊長はロード君が思っているより、繊細なんだ。こうして、ガス抜きしないと強くなれないんだ。それが隊長の弱くて強い所なんだ。」
「弱くて強い? 弱さが強さになるのか?」
「そうだよ、それがアラウス・武山隊長という人間なんだ。最近はロード君のおかげで隊長や僕たち第一部隊は明るくなってるから、感謝しているんだよ。」
「そっ、そうか。私は皆のおかげで足りないものは何なのかを学ぶことができるから自分の方が感謝しているんだ。」
「足りないものか。君もあの頃の僕と同じく成長しているんだね。」
「ああ。片付けは私がする。ディオメはそのまま、アラウスを慰めてやってほしい。」
「分かったよ、ロード君。」
ロードはまず手始めに机の上に散らかった酒瓶や缶詰から片付けようと手を伸ばすと、不意にある酒瓶に落として、地面に割れた。
それを見たロードの脳内は赤く広がるワインの汁がかつて自分が殺した敵兵の血へと変貌するように
「ああ…あああ…うわぁぁぁぁぁぁ!!」
ロードは叫びを上げ、その場で蹲った。
「あああ、許して下さい! 許して下さい!」
「どうしたんだい、ロードくん!?」
精神的に追い詰められたロードにディオメは駆け寄る。
「殺してごめんなさい! 殺してごめんなさい!」
「落ち着いて、ロードくん! ここは戦場じゃないんだよ!」
ディオメの呼びかけにロードは正気に戻り、頭を抱えながらよろけ立つ。
「…すまない。取り乱した。」
「ロードくん、今のはPTSDかい?」
PTSD、または、心的外傷後ストレス障害。それは
「私は何度も思い出すんだ。殺した者たちの顔を。憎しみ、絶望、狂気、そして、血の色を。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます