君を召喚させない異世界魔法

三日月深和

双炎の腕と種子の乙女

第1話



「『双炎そうえんかいな』『太陽シャムス断片かけら』『識の魔道具師アルケミスト』以上三名、現着しました」


 “学園長室”と書かれた、静かで社長室の様な空間に女性の声が響く。その声に応えるように、敬礼をする三人に背を向けていた初老の男性が彼女らに向き合った。


「ご苦労、では早速依頼の確認をする」


 男性は机に目の前の置かれていた薄い紙の束を手に持つ。


「依頼主はいつものヴェルディ王国。急な依頼だ、すまないが対応を急いでもらう」


 言いながら、その中に束ねられていた写真を一枚三人に見せた。


「改めて、この女性が『種子シード』だ。“奴ら”の手に渡すわけにはいかない。事前に言っているが、こちらの世界で保護は危険だと判断されている。各自資料を確認しておくように」

「了解しました」


 三人の中の黒髪の青年が言う。


「現状、計器に異常は認められません。マナ波形も異常なしです」


 同じく三人の中の金糸の髪の青年が報告する。男性は、「了解した、ありがとう」と述べて持っていた写真を下ろした。


「さて、話を進めるぞ」


 男性は紙の束を持ち直す。手にしているのは資料のようで、男性は紙に記された細かい文字を確認しながら話を続ける。


「まぁ資料にも書いてはあるが…目標のより細かい情報は二人の方が詳しいだろう———」

「把握済みです」


 男性は黒髪の青年の言葉に一つ頷いた。

 しかし金糸の青年は「本当に把握できてるのか?」と茶化すような調子で言い、金糸の青年の右隣にいる赤毛の女性がその脇腹に軽く肘鉄を入れた。


「そうか、では細かい話をする必要はないだろう。ブリーフィングは以上だ」

「「「了解」」」

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