17の魔法
道草
第1話
17度目の夏のこと、
その人は不意に現れた。
彼女は全てを見透かしていた。
友達、将来、自分のこと、
悩める私に、
彼女は言った。
「心配ないよ」
そう言って微笑むと、
彼女は私に魔法をかけた。
私だけに見える魔法。
私の周りにだけ働く魔法。
今だけの魔法。
ふっと心が軽くなったような気がした。
明日が見えたような気がした。
そこで私は笑っているように見えた。
17度目の夏のこと、
それは全部がイヤになっていたときのこと。
彼女は全部分かっていた。
あれも、これも、みんな、
遠ざける私に、
彼女は言った。
「人それぞれよ」
そう言って微笑むと、
彼女は私の頭を撫でた。
古傷も、憂いも、自分のことも、
愛してみたいと思えた。
ただ見えてないだけで、
そこにちゃんと、
私の手の中で、
ずっと生きていたみたい。
蘇らせてくれたあなたは、
きっと魔法使い。
17度目の夏の終わり、
その人は現れなくなった。
彼女は私を救ってくれた。
明日が見えたような気がした。
そこで私は笑っているように見えた。
私は呟いた。
「もう大丈夫みたい」
私だけに見える魔法。
私の周りにだけ働く魔法。
今だけの魔法。
17の魔法。
17の魔法 道草 @michi-bun
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