中川葵、小学生

@kagaminonaka

ごはん。。。

私はまだ見ない宇宙を眺めている。

ここは家の中。

でも目を閉じれば真っ暗の中に瞬く星たち。

白くてシワのあるでかい宇宙服を私は着ていて、ぷかぷかと、だだっ広い宇宙に浮かんでたゆたう。

素晴らしい景色だ。

いや何もないな。

ただ気持ち良い。

宇宙…好きなのかもしれない。

そんな空想時間に浸る。

気持ち良く浮かび、瞬く星を眺めていたら、灰色の大きい頭に大きい目、細い体の宇宙人が近寄ってきた。

そして手の届く所まできて私に向かって話かけてきた。

ピコピコピヤピロポロパヤ…。

電子音のようなその言葉は解読できず何を話しているか全くわからない。

それなのに宇宙人は話をし続けて、次に向こう側を指さした。

その先はまばゆいばかりの光を放っていて真っ白で思わず目をしかめる。

あーーー…。

現実に戻った。

私はベッドに横たわり天井を眺めている。

はーー。

「ごはんはいかが?」扉の向こうから高い声が聞こえる。

「いらなーい。」

なんだかこの頃、胸糞が悪い。

なんにするにも無気力で、ムカムカイライラしている自分。そしてまた落ち込む。

あー。思わずそんな息ばかり吐く。

「宇宙人、私をどっか連れてってくれないかな?」

「さて、どうしようかな?」

なに?今の声。男の人?思わず周りを見渡す。

誰もいないとまた天井を向いた。

「ひゃ!」

長髪の顔の整った男性が私を覗きこんでいた。耳が尖っている。

さっきベッドの横にいなかったのよね!

「なに!誰!あんた!」

「さて。おやすみ。」

そういうと背を向けて窓の方へ歩いて消えた。

「いやあああ。」

だんだんだんだんと階段を昇る足音。

「どうしたのです?」

私はハッとした。今、目を開けた。

「夢…みたい。」

「もうびっくりしましたわ。もうすぐごはんできますからね。」

そういうとお母さんは部屋から出ていく。

「はーい。」

しばらくボーっとしてから階段を降りる。

キッチンの四人がけテーブルには晩御飯の料理がズラリと並ぶ。

唐揚げ、千切りキャベツ。かぼちゃの入ったお味噌汁。苦手なピーマンのなんとか料理。肉団子の甘ダレ。肉団子を真っ先にいただく。

うん美味しい!次にお茶をすする。

お父さんが左前に座り、お母さんが右に座った。なんか話しているが、耳にも入らず料理を頬張る。次は唐揚げ。少しキャベツ。やっぱりドレッシングかけないと味ない。マヨネーズをかけて、うん!美味しい。お母さんがお皿にそっとピーマンを乗せてくる。「いらない!」

「ふふふ。」

私はかぼちゃのお味噌をすする。なんだかスッと気分が良くなってきた。

お母さん。お母さん。なんだか目から涙が流れてきた。美味しい。鼻をすすった私に気がついたお母さんは

「あらあら」と穏やかに言った。

「良かった。いっぱいごはん作ったかいがあったわ。」

お母さんは私をそっと抱きしめ

「ごめんね。最近ごはん作ってあげられなくて。お菓子ばっかり食べてたって聞いたよ。ほらここニキビできてる。」

私のほっぺとおでこをツンツンと指で指して言う。

「ごはんおかわりどう?」

「うん。食べる。ありがとう。」

ぐすんぐすん泣いている私を、お父さんは優しげに見ていた。

お腹いっぱいになって泣いた私は寝てしまった。心地良いベッドの中。

薄暗い部屋に、窓の外は星の光で少し明るい。

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