31.病名確定!
病院に行く日は、必ず空が晴れている。
都合のいい記憶の改ざんなんだとは思うのだけれど、そういえばこの街に住んでいた時の景色はなんだかどれもからりとこんな風に晴れていたような気がして、それが当時はすごく嫌だったことを思い出しました。
初めて東京で生活を始めたのが、病院のあるこの地域でした。
当時は、好きだった人たちと離れることが嫌で嫌でたまらなくて、陰湿で曇った記憶しかないあの町に帰りたくて、東京が憎くて仕方がなかった記憶しかありません。
今や採血の精度が恐ろしく高いこの街に、少なからず親しみを抱いているのだから、人生本当に何が起きるかわからないものです。
麻酔科、婦人科、看護科のオリエンテーションを受けました。
前回パチ先に「麻酔の先生の説明があるので、絶対に遅刻しないで下さい」って言われてたのに、認識してた時間は違うわ(予約確認のLINEで気付いた)バス遅れてて五分前着だわ、なかなかのスリルとサスペンスで開始したおかげで「めんどくさいなぁ」以外の感情が挟まることなく病院の時間を迎えることができました。
まずは綺麗なお部屋に通されて、十五分ほどの映像を見ます。
麻酔の種類や入院から退院までの流れなどをレクチャーしてくれる、丁寧な映像。
ようは「お前の意識をこうやって奪うぞ」の事前講義です。
針とか出て来て普通にこええよ。
意識がある間に背中に針入れて局部麻酔する場合があって、合併症などの症状を確認するために意識がある状態で入れるって言われました。
何それほんとに怖い。可能ならすぐに意識を奪って欲しいのに。
頼むからこれじゃありませんように。
映像を見た後、麻酔科の先生との直接面談をしました。
ほぼ三十分刻みで次の科の予約が入ってる状態なため、待機している間に次のパチ先の予約の通知がLINEに届きます。
待って待って待って。むりむりむり。私はひとりなんよ。
フロアも違うし、ある程度覚悟はしてたけどこれはバタバタになりそうだぞとそっとスマホを鞄にしまい込んで先生の説明を拝聴します。
麻酔科では、映像に沿った知識で同意書の説明がなされました。
この辺の効率化、本当すごいなこの病院って思います。
着弾、LINEの予約用QRを自動受付に読み込ませる、長いレシートみたいなのに受付の番号と階数と予約の科が記載されていてそれを頼りに各フロアを巡る、最後はバーコードを精算受付に提出し、番号が表示されたら自動精算機で金払って終わり。
基本こういう流れで進められます。
まさか説明まで映像で簡略化されてるとは。すげぇーって素直に声が出ました。
麻酔に関しては、背中から針入れるやつと全身麻酔の併用みたいです。
あー、やっぱりやるんだ。背中に針入れるやつ。
もう文章すら打ってて怖いよ。背中から針入れるやつ。
映像だと説明から何から何まで優しそうな先生が、「怖いですよね。なんでも相談して下さいね」みたいなセリフを仰ってたのですが、目の前の担当の先生、なんというかバカなことしゃべったら◯されそうな結構エッジの効いた女医さんで話が違うもう話が違うって半泣きになってました。
ガチでで氷とかナイフとか、そういう形容詞が似合う先生。
絶対にアホなこと言わないようにしようって、心に誓いました。(遅刻はしてないけど時間ギリになってすみません)
麻酔科って人手不足で院内でも特に大変な科だって噂もあるし、パチ先が前回とにかく遅れないように念押ししたのもそういうとこなのかなって思ったし。
この先生にも多分知らん苦労が山ほどあるんだろうと心を落ち着かせながら大量の同意書を渡され、次はパチ先の元へ向かいます。待たせてごめん!(五分遅刻)
さすがに三回目ともなると、いくら人見知りの私でもちょっと安心します。
相変わらず楽しそうに腫瘍の話してくれるね。
うんうん。今日はそのドSな笑顔が癒やしだよパチ先。
「というわけで、最悪のパターンだと閉経します」
いや、本当に最悪のパターンの話をしたな今。
ごめん待って。さすがにそれは不意打ち。私も笑っちゃう。
最悪って本当急にやってくるんだなぁって、ぼんやりしちゃいました。
いい感じに脳が現実を受け止めるのを拒否しています。うける。人間ショックを受けると逆にフラットになるんだなぁ。って。
今回、病名が確定しました。
『卵巣嚢腫』
卵巣の中に、皮膚や歯の成分ができる嚢腫です。
って、病院のwebに書いてありました。
うけるその2。それが二個もでかくなって膵臓押し上げてんの? スカイツリーもびっくりだぜ?
いくつか点在してる中でも、二個とにかくでかいのがあって今回二個とも取ることになったっぽいです。
再発率は二割、それが二個だからシンプル倍だって考えろって言われちゃいました。
取ってみないとわりとわかんない腫瘍で、最悪再手術もありえる。
手術時間自体は、二時間から二時間半くらいをみてる。
お腹は横に切るけど、場合によっては縦に切ることもあるかも。
子宮は残す前提で切る。
けど、ホルモンの影響で最悪閉経することもある。
あんまり深刻にならないように説明しようとしてくれてるのか、私のキャラ的にそういう対応でいいと思われたのかわかんないけど、なんかすげー笑顔が垣間見えるんだよな。パチ先の説明。
言ってることガチで怖いけど。
あと流れで採血も今日しろって言われて、泣きそう。
輸血が発生するので、血液型の再確認と成分の詳細検査をもう一回するって言われました。
輸血かぁ。こんな形で関わることになるとは思わなかった。
なんか、健康になったら一回くらい献血行こうかなって思いました。
血取るのも気分悪くなるのも嫌だけど、使った分くらいは返しておいた方がいいのかなって。
手術したらどんくらいでできるようになるんだろう。
退院する前にパチ先に確認しよ。
しかし、ほんと流れるように最悪を突きつけてくるよね。パチ先。
でも、メガネの白衣の真面目そうな男の笑顔、普通に弱い。許す。(何様)
というわけで、病名も確定して最悪のパターンをある程度開示され、次は看護科へ。
ここでは、看護師さんから入院前日からの流れをレクチャーしていただきました。
入院の二日前か前日に、入るお部屋が決まるらしいです。
満床って聞いてるけど本当にそうなんだなぁ。
希望にそえないこともあるらしいのですが、婦人科は大部屋でもMAX四人までの制限がかかってるっぽいので仕切りのランクだけ上げて申請してるのですが、さてはて部屋ガチャはどうなる。
入院初日からの流れをしっかりと説明していただいたのですが、陰毛は切れ、初日下剤、絶食、水も飲むな、管思ったよりも長くついてる、尿カテぶちこむ、う◯こはベッドでしろ看護師呼べ、と、命を助けていただく施設に対して下品な語彙で大変申し訳ないのですが『尊厳破壊ハッピーセット』って言葉が頭をよぎりました。
いや本当、助けていただく立場なので不満は何もないです。
出て来る時には、人間が大きくなってるかもしれないと思いました。
もう何も怖いものないでしょ、今回の入院乗り越えたら。いやあるけど。今回触れてない死ぬ以外の最悪もいくつか開示されてて、最悪パターンのバリエーションも豊富に取り揃えられてるけど。
人に頼ることが苦手な部分もあるので、そういうのもワンチャン改善しそうな流れだなぁと思いました。よろしくお願いします。お世話になります。
ある意味入院が楽しみになってきました。
任して。切ってやりますよ、陰の毛!!!!!!!!!
ほんで、急遽追加された採血に向かいました。
嫌やぁ。何回やっても慣れません。
唯一の救いは、ここの看護師さんは全員採血バカうまいってことだけです。
誰にあたってもガチで痛くないです。
あとからじわじわ来るタイプの人もいるけど、入れる時に痛くなかったらもうなんでもいいよ本当。
めっちゃうまい人しかいないので、もう今後採血は一生全部ここでしたいまである。
二本分血を取られて会計をして、なんとかクリア。
全部で二時間半のフルコースでした。疲れた!
LINEを見ると、友人がスタバのチケットくれました。
おいおいおい。院内にスタバあるよ。かっこいい。ありがとうサンキュー有り難くいただきました。キャラメリーミルクコーヒーフラペチーノ。うめー。
さてはて、はーあ。うっすらわかってたけどやっぱきちーな。です。
けど、今考えても仕方ないことを考えるのはやめます。
さあ、楽しいお買い物の時間だ。
最高の入院キメたるで。
まずは腹帯買ってきます!!!!!!!!
(続)
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