22.贈り物がくれるもの

 顔色を整える時用にラメの入っていないアディクトリップグロウ、退院する日に使うブルームクチュールアイズ、ポケモンのチョコについて来たポーチ、リファの赤いハートブラシ、ホゲータのケーブルバイト、プレゼントを包んでいた布のラッピングバッグにはシャリタツの靴下を忍ばせました。

 大切な人たちがくれたものを、少しずつ持ち物リストに入れてます。


 贈り物をするのが、好きです。

 プレゼントにかこつけて、自分のフィールドで相手に殴りかかる絶好のチャンスだと考えている節があるオタクです。

 その時の自分の大好きなものや、その人が使ってるところを見たいもの、布教したいもの。

 相手に自分の好きを少しだけ分けて渡せるのが、とても好き。自己満足。

 それで、あわよくば喜んでもらえたらもっと嬉しい。

 だから、どちらかというともらうよりあげる方が好きです。


 それも、今回の一件で少しだけ変わったような気がします。

「入院の時に、持って行って欲しい」

 そんな風に言われてプレゼントをされることが、少しだけ増えました。

 私が腹を切るだけのことなのに、何が必要か考えて、私が好きそうな物だったり、その人が素敵だと思う物だったりを渡してくれる。

 そんな嬉しいことがあるんだなと、シンプルに感動してしまいました。


 十日も家を空けることなんてほとんどないので、今はまだ想像もつきません。

 正直、不安に思う気持ちがほんのりと膜のように体を覆いながらも、どこかまだ他人事のように受け止めている節を感じています。

 自分と同じ自分がもうひとりいて、その自分ではない自分が手術を受ける。

 最近は、そんな気持ちになることが多いです。

 けれどどこかに、ずっと怯えている臆病な自分が居るのも事実で。

 ああもうこのまま暗い穴の中で、次の春を待つように眠りたい。なんて。

 だからこそ、ふと思ったのです。

 きっとその時が来たら、今日までもらって来た物たちはきっと私の背中を支えると。

 大袈裟かもしれないけれど、多分きっと、私がもらったものは勇気に変わる。

 そんな予感が、今はただこの胸を優しく満たしてくれています。


 贈り物って、ただ物をあげてもらうものではない。

 誰かの気持ちを、受け取るものなんだなと。

 改めて、あげるのももらうのも嬉しいものなんだなと。

 そんな風に思った、雨の朝。

 お前ら、退院したら覚えてろよ。首根っこ洗って待ってろよ。

(通販サイトを開きながら)


(続)

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