14.手術日決定(後編)
検査は突如言い渡される。
だがそれは、すべての始まりに過ぎなかった。
現実から逃げる初心者。
パチ先の傲慢は、自分が彼を救おうと決心させる。
次回、『見知ら
後編です。対戦よろしくお願いします。
システム化された大病院の、あまりにも理路整然としすぎたオーダーに振り落とされぬよう縋り付くよわのわナメクジの私。
渡された大量の書類を受付に持って行くと、五箇所のチェックポイントが開示される。
多くない?
マップに印をつけながら、受付の女性が順番と位置をすごい早さで道順を伝えてくれます。誇張なしで五万回説明して来た貫禄がありました。あまりに整いすぎた、ロボのとうなアナウンスだ。
ああ、これあれだ。RPGのフラグ立てだ。見た見た。ゲームで五万回見た。
あれでしょ、周辺にいる人たちから話を聞いたり、怪しい場所を調べたりするやつ。
やってやろうじゃん。こちとらゲーム大好きマンだ。お使いなんてお手の物だコノヤロー!
マップ片手に、私の壮大なる冒険が始まりました。
まずはX線。よっしゃどんとこいや!
エスカレーターを下り、最初のチェックポイント(受付)に到着します。
空いてる椅子の端っこにコートを置き、「待ってる間に記入して下さい」って渡されたボードに目を通します。
看護情報シートってやつみたいです。四箇所目のチェックポイントである入院申し込み受付で提出するものみたい。入院の時、看護師さんの参考になるやつかな。どれどれ。
「初心者さん、二番に入って下さい」
え、早くない!?
待ち時間、二十秒でした。朝だからかな。そういうこともあるよね。病院って待ち時間がすごいこともあるみたいだし、ラッキー。初心者さん入ります!!!!!!!
謎のげきせまルームに突っ込まれ、紙の検査着(上半身)を渡され上だけ全部脱げってまろやかに言われました。
レントゲンだもんね。おっけー。任せな。部屋の中だけど、外の物音がっつり聞こえる場所で脱ぐのなんか緊張すんね!
もたもた準備して番号を呼ばれて奥の扉から中に入ると、めちゃくちゃ広いX線室が広がってました。
何ここ。実験場??
多分だけど、力士が二十人詰め込まれてもまだ余裕あるよこの空間。
相変わらずノミムシくらいの感想しか出て来ない私を、男性の技師の方が素早く位置につかせてくれます。
髪長い人は頭の上で留める用のクリップ貸してもらえました。
念の為束ねて行ったけど、こういう検査ある時はアップにした方がいいみたいですね。勉強になります。
前撮って、横撮って、終了。
一瞬で終わって元の部屋におさまると、隣の部屋の番号が呼ばれる声が聞こえました。
どうやら、大きな検査室ひとつにいくつもの更衣室が繋がっていて、順番に入れ替える仕組みになっている模様。
すごい回転だとは思ってましたが、各部署徹底して回すという強い意思を設備のはしばしから感じます。
持ってたマップのX線の項目にもいつの間にかしっかりチェックがついてる。
は、早い。大病院ってこれくらいできないと回らないんだろうな。すごいなぁとプロの仕事を目の当たりにしつつ。
検査着を指定の場所に脱ぎ捨て、外に出た私は次のマップを確認します。
次は心電図の検査です。上に戻るぞ!
心電図検査フロアの待合室は、多くの患者さんが待機していました。
診察室に向かい合うように、検査所がずらりと並んでいます。
ここは、何か人気の科なのかもしれませんね。(なんだ人気の科って)
受付を済ませ、待合室の椅子に座る間もなく番号を呼ばれます。
カーテンで仕切られた部屋で、服をまくりあげて横になるように指示が書いてあります。
いらすとやで。
Oh、やっぱりここにもあるんだ……。謎の感動。
ブラしたままでいいのか、どうなのか。もたもたしている間に先生が入室されました。
「心電図はかっていきますね。タイツ少し濡らしますね」
いや、こんなこと言ったらセクハラになるから言わないけど、先生めっっっっっっっっっっっちゃ美人。
ショートボブがきりりと似合う、軽やかな雰囲気の女医さんに色んな器具をつけられていきます。
「右に力が入ってますね。力抜いて下さいね」
いや無理だって緊張するって。かっこよすぎる、先生。
集められるだけの集中をもって、心電図を乗り越えました。
心電図ってそういうのだっけ??
緊張しすぎて変な体勢でブラ外したから、なんかちょっと背中痛い。
ダメージを受けながら、次のチェックポイント、採血室へ向かいます。
いいいいいいいいいいいいいいやだあああああああああああああ!!!!!!
この時が来てしまった。めちゃこわい。まさか今日採血するシーンがあるなんて思わないじゃん。
もういっそ首を落としてくれ。ひーん。
よくわからないまま自動受付機に並びます。診察券を通すと検尿カップがぽとり。
うける。なんだこのシステム。
なんかこの辺の流れ全部自動化されてる。回収も謎の機械だ。
十分流れ作業が徹底してたけど、ここまでシステム化してるのほんとすごい。
対面気まずいチェックポイントが自動化されてるの、ほんとありがてぇ〜。
息吐く間もなく、採血開始です。いやあああああああついにきたああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
番号を表示する大きな画面に、血管迷走反射の方は遠慮なくベッドをご利用下さいと表示されています。
ナイスナイスナイス。それだ。それでいこう。ばっちこい!
「よろしくお願いします! 採血で倒れちゃったことあります!」
「そうですかぁ。座った状態で大丈夫ですかね?」
だだだだだだ大丈夫じゃねーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
なんで画面に表示させてたん?
なんで気を持たせたん???
でもそうだよね。後ろのベッドまで案内して、寝てもらって、ってやってる時間もったないよね。だってすごい人数待ってるもんね!
「頑張ります!!!!!!!!!!!!!」
頑張ることになりました。うける。押しに弱いんだよ私。ざこい。
「多分見ない方がいいと思います」と言われて元気よく返事をする気力だけは残ってました。
「見ません!」
「親指握ってて下さいねーえーっと」
看護師さんが血管を探って下さいます。
「すみません、ぷにぷにで」
なんだこの謝罪。いやほんと、ぷにぷにで。血管見えにくくてすみません。
いつでもどこでも比較的ばしばししばかれます腕を。物理的に。
半泣きで迎えるいざ採血の時。
ぜ、全然痛くねーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
さすが、回転命の大病院でぶんまわしてるプロフェッショナル。
針ささった瞬間もあんまわかんなかった。すごぉ。
もう採血は一生ここでやりたい。そんくらい最高の採血でした。
ビロードのような、深みのある、野性味の中に確かな樽の香りを感じる、芳醇な、百年に一度の採血でした。ありがとうございました。
看護シート書く暇なかったね!? ちょっとそこらへんで座って休憩しようね! お茶うめー!!
最大の山場を終え、いよいよ最後のフェーズ。
入院申し込みに移ります。
今日申し込みできるんだなぁ。ほえー。
専用の窓口に下りて行き、受付番号を取っていざ出陣。
看護シートもここで提出です。ふいー。やってやったぜ。
ここで部屋のグレードも決めないといけません。
事前にwebで調べていたので、無料大部屋よりひとつ上の五人部屋にしようかなと思っていたのですが、どうやら科によって持っている部屋が違うみたいで。
さらにもうひとつ上の四人部屋しか選べない様子。うーん。保険でギリまかなえるか。じゃあここにしまーす!
ってことで、ある程度持ち物の説明などを受けて解決。受付へ!
ミッションコンプリート! あの! あのファンファーレ鳴らして! おなじみの! あれ! 頼む! 終わったあああああああああああ!!!!!!!
こうしてぐるぐると病院をめぐり、取られるものを取られ(血)無事帰路につくことができました。
お疲れ様でした。
大きな病院は、本当に専門がそれぞれ細分化されててしすてまちっくでさくさく進んで、ぐるぐる回るのは大変だけど待ち時間がほとんどなくて快適でした。
改めて病院内を巡ってみたけど、広いし綺麗だしコンビニもいっぱいあるし、今のところ先生もいい感じの方ばかりで入院が楽しみです。切られるのは怖いけど。ほんとこわいけど。ほんと怖いけど!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
次は、手術の説明と入院のオリエンテーリングがあるそうです。
オリエンテーリングって何。柔道部によるデモンストレーションとかあるのかな。すみません。あんまり社会のことがわかってなくて、字面の記憶が義務教育で止まってる。
次はちょこっと先。来月の受診になります。
ひとまず、これで安心して予定が立てられる!
歯医者も行きたいし髪も切りたいし、遊びにも行きたい!
あ、あと質問リストの質問一個聞くの忘れてた。あちゃー。こういうこともあるよね。用意しといてよかった。なかったら多分全部忘れてた!
オリエンテーリングである程度解明されそうなので、また気になることはリスト化しておこうと思います。
というわけで、いよいよ入院準備に向けて本格始動です。
皆様、もうしばらくお付き合いいただけると幸いです。
そういえば、看護シートに「入院中の目標や目的を書いて下さい」って枠があって、えっ何それ意気込み?なんだろうこれ?って一瞬パニックになりました。
『関わって下さる関係者の皆様や、他の患者様にご迷惑をおかけしないようにしたいです』って書きました。
なんだこれ。絶対そういうこと書くコーナーじゃなかった気がする。この情報いる??(多分いらない)
(続)
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