人身事件。

斎藤 三津希

201号室

「あぁ、あっ、あっ。」

 声を出して確認するが、やはり左耳には水が入ってしまっており、外の音や声がこもって聞こえる。

 下の階の迷惑は承知で頭を左に傾け片足跳びをしばらく行っていると外の音が鮮明に聞こえ始めた。頭を拭いていたタオルで耳から出てくる一滴、二滴程の水滴を取り、着替え始める。

「ダサすぎだろ、なにこれ。」

 赤緑赤緑赤緑という配色で構成されているパンツを渋々履き、そのまま台所へと向かう。冷蔵庫にはいつの物か分からない残り物が複数個あり、そのうちの一つをレンジで温める。

『毎週火、木曜日可燃ごみ』

 ふと見た壁には地域のごみの分け方と出し方についてのポスターが貼られている。

「明日、燃えるごみの日か。」

 レンジの音に負ける声量でそうつぶやくと、まだ袋に入れていないごみを入れた後、淡々と燃えるごみの入った袋をまとめると明日出しやすいように玄関に燃えるごみの塊を置く。

『ピィーピィーピィーーー…』

 ちょうどレンジが終わりの音を鳴らす。レンジを開け、その中のタッパーを開ける。肉が茶色で、底にに溜まった脂はキラキラしている。

「これ生姜焼きか美味しそうだな。」

 鼻がバカになっているので気が付かなかった。とりあえず手を洗い、箸を探す。

「箸どこだ。あった、じゃあ、いただきます。」

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