パパの娘は魔女屋さん

真殿すみれ

幽霊で撃退! 困ったお得意さん

幽霊で撃退! 困ったお得意さん

明るい照明。大きな鏡。手をかざせば温水が流れる自動式の蛇口。

それらはピカピカに磨かれていて、清潔感があり気持ちよく使える。


普段何気なく使っているトイレこそ、その会社の経営状況や品格がハッキリ表れる場所ではないか? 私――紫藤薫しどうかおる(40歳)はそんなことを考えた。


鏡にはシルバーフレームの眼鏡をかけた男が映っている。ワックスで7:3のオールバックに整えられた髪型が、真面目そうな様子に拍車をかけている。これが私だ。


鏡をまじまじ見つめると、目の下にうすぼんやりとしたクマができているが、その理由はわかっている。を思うと、ここ最近眠れない日々が続いているためだ。


衣服の乱れがないことを確認してトイレを出ると、コートを羽織り革のカバンを持つ。警備員や残っている部下に「戸締りをお願いします」と声をかけて店の裏口から外へ出る。


店を出る際に後ろのほうで従業員たちが「クマが……」「やはり明日のお客が」「大丈夫かな?」とひそひそ話をしているのが聞こえた。


ええ大丈夫、心配なんていりません。これから魔女むすめの力を借りに行きます!


本来、家に向かうなら道を左に曲がらなければいけない。しかし、私は娘に教えられたとおりに、裏口を出て

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