追いかけてヨコハマ
梅春
第1話
「追いかけてヨコハマ、あの人が逃げる」
大崎由美は口ずさみながら住宅街の間の細い路地を歩いていた。
周囲に戸建てが隙間なく建てられているために、午後一時を過ぎたばかりなのに周囲の日当たりは悪い。
そう。あの人は逃げた。
どこにも逃げれない、高校生だった私を置いて。
もう十年も前のことだ。
「残した捨て台詞に誰か、見覚えはありませんか」
一生に一度の恋、みたいなものがあるなら、人はそれを何歳ぐらいで迎えるのがベストなのだろう。
何歳がベストかはわからないが、自分はそれを迎えるのが早すぎたことだけは確かだった。
由美は高校二年のとき、英語教師の伊田信一郎と恋をした。
その恋は由美の妊娠により、最悪の終わりを迎えたのだけれど。
由美は卒業後、逃げるように実家の小倉を出て、横浜の専門学校に進学した。
二十七歳の今はコンビニでバイトをする気楽な主婦になっている。
「旅の支度をした人ばかり、どうしてこんなに多いのでしょう、ヨコハマ、ヨコハマ、似た街はどこかにそんなにありますかー」
海が近く、山を背にしたヨコハマは、自分が育った小倉の町に少し似ていると由美は思う。
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