龍宮寺、ゲームの中に転生する。

あに

転生

第1話 転生


 白なのか黒なのかすらわからない。

 何もわからない世界で何日かもしれないし何百年かもしれない。

 

 何もわからない世界から気付くと俺は大地の上にいた。

「リュウ!何ボーッとしてんだ!そっち行ったぞ!」

「…ぉ、おう!おりゃあぁぁ」

 アタックボアの突撃をガードする。

「ウィンドカッター」

“ドウッ”

 と倒れる暴れ猪ことアタックボア。


「さ、早く解体するぞ!」

「解体…おう」

「ボーッとしないでよ!さっさとして!」

「おう」


 あれはなにをしていたんだ?俺は一体。


「リュウ!お前邪魔!ちょっとそこで休んどけ」

「…おう」

 俺は木の陰に座った。


 龍宮寺財閥の一人息子、龍之介。

 俺はその人だった。

 欲しいものは何をしてでも手に入れる。

 金で買えないものはないと思っていた。

 だが死ぬ間際に金で買えないものはあると分かった。


 そして後悔しながら死んだ。


「あれは夢?前世の俺か?しかし、ここは」

 俺の兄貴のサクヤに俺の妹のサーシャ。

 俺たちはボロを着てその日の食べ物を何とか狩りや木の実で誤魔化している。親の残したのは家と少しの金だけだ。

 今日は運良くアタックボアを狩ることができたのでこれを売ってパンや日用品を買うことができる。


 これはあれか?龍宮寺財閥の作ったゲームの中か?いや、フルダイブ型でもこんなに臨場感はないだろう。


 ステータス

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 リュウ  18歳

 レベル12

 スキル ガード 怪力

 ユニーク ガチャ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 は?俺のステータスが見れるのか?しかもユニークでガチャって?どうやったら回せるんだ?

 

「ん?なんだこれ?」

「どうしたの?」

「これ何のコインだ?」

「金貨とかのお金じゃないみたいだね」

 兄貴達の声が聞こえた。

「それだ!それを俺にくれ!」

「うわぁ!なんだよ!いきなり!」

「それを俺にくれ」

「わーかったから、ほれ」

「ありがとう」

 龍宮寺の頃にありがとうなんて言葉は使わなかったな。


 白いコインのようなもの、これが多分ガチャのコインだ。

 ステータス画面を出してコインを当ててみるとガチャの画面に変わった。


 恐る恐るガチャを回すと虹色に光るガチャが出てきて割れる。

『ラック上昇』



「は?これだけかよ」

 俺は運が上がっただけかよ。


「リュウ!もう行くからそっち持て」

「あ、あぁ」

「今日のリュウニイおかしいよ?」

「悪い」


 街に戻るとちょうど商人が来ていてアタックボアをいつもの1.5倍で買い取ってくれた。

 

 両親が残してくれた家に住む俺らは、今日の稼ぎで腹一杯飯を食うことが出来た。


 次の日も狩りに行く。


 今日はついてないなぁと思っていたら、いきなりハンティングベアが転げ落ちてきた、もう虫の息だ。兄貴がトドメを刺すとサッサと血抜きをして担いで街に持ち込む。

 もしかしたら誰かがここまで弱らせたのかもしれないな。だが気にしない。

 それが本当にこのクマだと証明できないからだ。


 ギルドの解体場で解体してまたコインが出てきたので俺のポケットに入れておく。

 ハンティングベアは高額で売れた。

 また、ハンティングベアを探している冒険者もいなかったことに安堵した。


 コインを見つめる。


 何が彫られているのかさっぱりわからないが、これがガチャのコインだってことはわかった。兄貴達はラッキーだと思っているだろうが、これはラック上昇の効果だと俺は思ってる。


 さて、こんなことしていてもしょうがないからガチャを回すか。


「今度はスキルがいい」

 口に出して言う。ただのジンクスだ。

 ガチャを回すと金色の玉だった。割れると、

『スキル 剣術(初級)』

 ステータスを確認すると確かに剣術が載っている。

 これで俺も剣士になれるな。

 冒険者としてはEランクだったが剣術が入れば申し分なくDランクにはいけるだろう。


「兄貴、俺は剣術のスキルを授かったぞ」

「は?お前はバカになったのか?15の洗礼でお前にはガードと怪力しかついていなかっただろ?」

「兄貴、嘘ではないんだ」

「…分かった。じゃあ教会「教会はダメだ、金がかかるから、それなら剣を買いたい」…分かった」

 鉄の剣、ただの鉄の剣だが、俺の剣術が活かせる。


「ほれ!」

 石を投げる兄貴、

“スパーン”

「ほ、ほうほう、剣術を授かったってのは嘘じゃないようだな」

 真っ二つに斬れた石は砕くのではなく斬れている。


「よし、今度からお前が倒せると思ったら倒していいからな」

「兄貴、ありがとう」

「いいさ」

 

 それから俺はモンスターを斬りまくりだった、と言ってもゴブリンが多いな。


 ゴブリン程度だと思ったような稼ぎにならないが、レベル上げにはいいだろう。スキル剣術はまだ初級だがこれを上げていかないとな。

 ゴブリンの心臓あたりから小さな魔石を取り出して集めて行く。クズ魔石と言われるが、飯の足しにはなるだろう。

 何匹倒したかわからないがそれなりに剣術が使えることがわかった。


「お前…返り血か」

「おう、兄貴、何とかものになると思うよ」

 俺はクズ魔石を兄貴に渡す。

「お前何匹倒したんだよ」

「わからない」

「まぁ、これはお前の装備に回そう」

「あ、ありがとう」

 革の鎧くらいなら買えるかもしれないな。


 あとは、一つだけコインが出たのでそれを回す。

 ガチャから出たのは『鑑定』、金色の玉から出たな。

 試しに兄貴を鑑定する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 サクヤ  20歳

 レベル20

 スキル 索敵 跳躍

 ユニーク なし

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 ユニークは無しか、索敵と跳躍があるから先頭にたってくれてるんだな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 サーシャ  16歳

 レベル10

 スキル 初級風魔法 解体

 ユニーク なし

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ついでにサーシャも鑑定したが風魔法に解体か、ユニークがあれば冒険者でやれたのにな。


 しかし、龍宮寺の記憶では貧民は飢え死にしても仕方ないと思ってたけど、いざ自分がなってみると死んでたまるかと思ってしまうな。


「リュウ、お前の革鎧を買いに来たんだぞ?」

「あぁ、すまない」

 そうだったな。鑑定で革鎧を見て行くと空きスロットが何個ついてるかがわかるな。

 これでいいな。

「親父、これはいくらだ?」

「ん?そこにあるのは全部20銅貨だ」

「本当にそれでいいのか?今にも壊れそうだが?」

「これは直して使うよ」

「それよりこっちの方がいいって」

「いや、俺はこれでいい」

「ん、もう!」

 サーシャには悪いが空きスロットが多い方がいいだろう。革の胸当て++だ。直せばまだ使えるんだしな。


「いくぞ!」

「おう!」

 狩りに来ていていまはアタックボアと戦闘中だ。

「よっと!おらぁ!」

 アタックボアの攻撃を避けて首に剣をぶっさす。

『プギィィィィ…』

「ふぅ、倒せたな」

「お前、一撃だったな!」

 兄貴が喜んでいるのが嬉しい。

「やった!私も見てたよ!」

「あぁ、強くなってDランク冒険者になるからな」

 サーシャにそう言うと解体を始める。


 やはりコインは出てきたので、ガチャを回す。

 金色の玉で付与だった。

 付与か…まぁ、いいだろう。

 革の胸当ての空きスロットにガードを付与してみると少し頑丈になったように感じる。


 この世界では休みなんかないが、これだけ毎日死ぬか生きるかを天秤にかけてると疲れてくるのが人間だ。

 兄貴に相談してサーシャだけでも休ませてやることにした。

「悪いよぅ、私も行くよぉ」

「いいから、今日くらいは休んどけ」

「ぅ、うん」

 やることがないことはいいことだと思うぞ。

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