第9話 最低の人間
「きみたち知り合い?カレはイヌカイくんか。で、きみの名前は?」
わざとらしい笑みを浮かべて、銀髪が楓に
「あの、この車ってあなたたちの車ですよね」
「そうだけど?」
「のんびり自己紹介なんかしてないで、はやく車をどかして下さい。下に人がいるんですよ」
楓の正論に、銀髪の顔から笑顔が
「おれに命令するんじゃねぇよメス豚。死にてぇのか?」
人に対して絶対に言ってはいけない言葉を銀髪が喚き散らした。
ひとしきり捲し立てると、銀髪は床に転がっていた缶コーヒーを拾い上げて一気に飲み干した。
「微糖かよ。脳みそに糖分がいかねぇとどうにもイラつくんだよな」
つきものが落ちたように落ち着いた口調で呟くと、銀髪は空き缶を投げ捨てておれに顔を寄せた。
「お前の彼女か?」
答えあぐねていると、背中に鋭い痛みが走った。背後の昌二がナイフでおれの背中を抉ったらしい。
「ち、違う。ただの知り合いだ」
「じゃあただの知り合いちゃん、スマホを捨ててこっちへおいで」
「言う事を聞きますから、店長さんを助けさせて下さい。ついでに犬養さんも」
スマホを投げ捨てた楓が銀髪に近づいてくる。
「約束するよ、知り合いちゃん。大丈夫だ。悪いようにはしねぇ」
銀髪がおれに向けてウィンクして見せた。こういう態度を取る奴が約束を守るとは到底思えない。
案の定、楓が車に駆け寄ると、昌二が楓の髪を
「じゃあ行こうかイヌカイくん。下手な真似したら女の腹を刺す。すっげぇ苦しいうえに、死ぬまでに結構時間がかかる場所だ。正直気の毒で見てらんねぇぞ」
「約束は守るから彼女を離してくれませんか?人質ならおれひとりで充分でしょう」
「かっけぇじゃん、イヌカイ。おれが女だったら処女を
この男は本物のクズだ。だけどそのクズに、おれと楓、この店の店長は命を握られている。
「楓さん、ひとまずこの二人の言う事を聞きましょう」
昌二に体を拘束されているかえでが
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