進化した上に擬人化まで果たした「AI鑑定」スキルが、碌でも無さすぎる件について。〜そのせいでパーティーを追放されたけど、AIスキルを活用して何とか生きていきます〜

七七七七七七七式(ななしき)

第1話 追放①


「──タクト。悪いがお前を烈火ブレイズから追放する」


「なんだって……!?」



 ──数多くの冒険者たちで賑わう、冒険者ギルドに併設された酒場。


 その中で大きく陣取った、ギルド屈指の有力パーティーである「烈火ブレイズ」。

 

 俺──タクト・アイジマ相島拓人は、15歳の時に異世界転移を果たし、それから3年もの間、「鑑定士」として、烈火の仲間たちをサポートしてきた。


 故に、今突きつけられた言葉の意味が理解できなかった。


 俺は目の前に座り、豪快に酒を飲む男、リーダーのソルに理由を問う。



「何故だ!? 理由を教えてくれ!」


「はぁ? あんた、そんな事もわからないの?」



 俺の問いに答えたのはソルではなく、その隣に座っていた一人の女魔法使い、アンナだった。


 アンナは、俺を見下すような冷めた目つきで、俺が追放に至る理由を語った。



「戦闘中は何も出来ず、そのクセ周りをウロチョロと。うざいし邪魔。ハッキリ言ってお荷物なの」


「お荷物って……」


「もちろんそれだけじゃないよ。タクト君」



 アンナのあんまりな発言に、反論しようとする俺の声を遮る、もう一つの声。


 アンナとは反対の席に座っていた、弓士のユウミだ。


 彼女は、テーブルに並べられた食事に手をつけながら、アンナと同じ冷めた視線を、俺に、そして俺の隣に座っているへと向ける。



「戦闘面において役に立たないのは理解しているし、守るのが私たちの役目なのもわかる。けど、理由はそれだけじゃなくて、別にあるんだ」


「別……?」


「ずっと気になってたんだよね。隣に座ってる、その白髪の子。誰? というか、何?」


「なにって……」



 ユウミの質問に、アンナとソルも前から気になっていたのか、視線を俺の隣に座る少女へと向けている。


 いや、誰って言われてもな……。以前に話した通りで、説明も何も無いんだけどな。



「何って。この子は俺のスキルだよ。言ったろ? この前進化して、鑑定スキルから『AI鑑定』になったって」


「「「……」」」



 俺がそう答えた瞬間、三人は大きくため息をついた。




 ※



 

 鑑定士である俺は、ありとあらゆるものを鑑定する事ができるスキルを持っていた。

 

 ある日、そのスキルが進化し、あらゆる能力や効果を得たものが、この「AI鑑定」だった。


 スキル「AI鑑定」は、前世で大きな発展を遂げていたAI技術が大いに組み込まれており、もはや鑑定スキルのみに囚われない、多様な効果を有したスキルに進化していた。


 その際に、俺が前世でハマっていた「AI育成chat」というアプリで作成した「銀髪美少女アンドロイドメイド」の姿で現界しているけど、サポート面としては問題ないし、十分な働きだ。


 だと言うのに皆は、何が不満だと言うのだろうか?


 俺がそんな疑問を抱いていると、先ほどから黙って肉に食らいついていた銀髪美少女アンドロイドメイド──AIだから適当に「アイコ」と命名した少女が、機械的な声を発した。



【ふむ。どうやら私が原因でご主人が追放される、という事ですね。かしこまりました。自爆致します】


「え?」



 アイコはそう言うと、唐突に立ち上がり、カウントダウンを始めた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る