第55話 初配信の娘って初々しくてかわいらしいよね。

灯見光の自宅。

 正確に言うならば、宮本宅と言った方が正しいだろうか。(作中で光の苗字は明かされているため)

 今日は何故かくりばいたるのVtuberみんなで光の家でお泊りすることになった。


 経緯は……。


「光のタワマンに行きたい」


 と秋谷先輩が言ったからだ。

 すると、未鈴もそれに賛同。

 というか、未鈴は


「てか、私、行ったことないじゃん、私もタワマン行きたいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


 と駄々をこねはじめる始末となった。


 そんな事があり、私たちは宮本宅にお邪魔することになった。


「お邪魔しまーす!やっぱ、広いね」


 秋谷先輩はそんな風に言った。その様子から入るのは初めてではないのだろうか。


 未鈴は「ほー」と言うあたり、本当に『初めて』という感じだ。


*****


 しばらく経つと、それぞれの他人の家という緊張はすっかり抜けて、皆の思うがままにくつろいでいた。


「おっ、もうこんな時間か」


 光がそう呟くと、彼女はスマホをとりだし、YouTubeを開いた。


「なんか見るんすか?」


 私がそう呟くと、光はただ一言、「うん」とだけ言った。


 どうやら、Xに気になる新人Vtuberがいたそうで折角だから行ってみることにしたそうだ。


 ちなみに彼女には『推さず』『つけず(FM)』『書き込まず(コメやポスト)』という『非推三原則ひおしさんげんそく』という変わった理念を持っているそうだ。

何故かは謎である。


「でも、配信は見るんですね」

「まぁ、気晴らしに」


*****


「初配信って初々しくてかわいらしいよねぇ」


 光はそう呟いた。


「それって、私がやったときとかですか?」


 未鈴はそう反応したが、光はそれを「ううん」と一蹴。


「お前は可愛くない」

「初っ端から飛ばしすぎだよねぇ」


 すると、未鈴は少し傷ついたようで、不貞腐れた表情をしていた。


「のどかみたいな初配信くらいが一番よかったよ」

「光ー。まだその話、書けてないからのどかの件はそこまでにしようね?」


 虹が何やら、怖い顔をして光に言った。光はこくこくと頷いているだけであった。


*****


「この今日初配信の娘、すごいですねぇ。初配信前なのにもう登録者2000人とな」

「それ、すごいの?」←初配信で10万いった女


 未鈴がまた、何食わぬ顔で言った。


「お前、フィクション。これ、ノンフィクション」

「アカナ、さっきから何言ってんの?」


「おい、こいつ、いきなり自分の心電図出し始めたぞ!」


 光がいきなりそう叫んだ。


「うわぁ。初配信から狂ってやがる」

「この姿勢気に入った!」


 光がいきなりそんなことを言った。

 まさか、こいつ、初めて「推す」のか?!

 そう思っていたが……。


「我々もやろう!!」


 そっちかよ。


 彼女は決して他人のVtuberを推すことないようだ。


*****


「でも、初配信の娘のチャットって平和だよね」


 秋谷先輩がそう呟いた。


「え?秋谷先輩のチャットも平和じゃないですか!」

「いや、アカナこそ!」


 お互いに謙遜している、日本人らしい光景というかなんというか。


 そんな感じで経ったこの一晩、いつも通りのくりばいたるの様子。

 はっきり言って平和であった。

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