第31話 コラボ配信週間やりましょう!

「「「やりません!」」」


 私、聖川、光はきっぱりと和俊さんに言った。


「マジで言ってる?」


 和俊さんは難しい顔をしながらそう言った。


「まぁ、君たち三人の考えは分かったけど、しっかり、未鈴とのどかにも訊いてね?」

「了解しました!」


*****


「え?普通にやりたいけど」

「うん。やりたい」


 二人からは反対意見が出た。


「なんでっ……。なんでやろうと……」

「それはこっちの台詞。折角、大物Vtuberとコラボできる機会がこんなにあって、知名度を伸ばすチャンスなのに、なんで活用しようと思わないの?」

「だめだ、アカナ、あっちの意見、正論すぎる」


 議論はこちらのほうが多数派のはずなのに、不利になっていた。


「てか、光の反対理由『ハードスケジュールがいやだから』って……。これで納得してもらえると思ってんの?何、光、バカなの?」


 秋谷先輩のとげとげしい言葉に光は既にノックアウト状態だった。そこに倒れて、泡を吹いている。心が限界を迎えたか……。


「それに、ママとアカナも!現実見ろ!!」

「ぐふぅ!!娘にそんなきつい言葉言われると、心がえぐられりゅー!」


 聖川は何かを感じ、頬を赤らめながら、そこに倒れて気絶した。


「失禁しないでくださいね~」

「いや、しないでしょ」


*****


「で、なんで、またあなたが来たの?」


 未鈴と秋谷先輩にボロカス言われた数日後、またつばさが東京からこの大阪のくりばいたるまで来た。


「なんか、コラボができなさそうって何故か思って来た」

「なんちゅーフットワークの軽さだ」


 ちなみに、今くりばいたるにいるのは私、アカナと光だけだ。三人の面談である。


「あ、コラボの件に関しては多分決行させられると思う……」

「ん?なんか二人とも乗り気じゃなさそうだけど」


 当たり前だ。どちらも、今回のコラボには反対派だったのだから。


「………………。やっぱり、二人は今回のコラボ配信週間企画、嫌なのか……?」


 私たち二人は小さく頷いた。


「そんな、まっすぐ、そんな意思を示されると、逆に傷つきもしないわね」


 つばさは呆れた顔でそう言った。


「せっかく、瞬間移動して東京から大阪まで来たのに……」

「瞬間移動?!なんだ!その能力!」


 つばさの冗談に光は興味津々だ。こいつ、本気で信じているのかさえ思わせるほどの純粋無垢な顔だ。普段は下ネタばかり考えているくせに。

 おい、つばさよ。そんな申し訳なさそうな顔をするな。「ごめんね、騙して」と言っているような、そんな顔をするな。

 そして、真横にある、光の顔を再度見ると……。


 その顔は頬が膨らんだ。明らかに笑いをこらえている顔だった。


 つばさは純粋無垢な光の顔を見たくないあまりに、俯いて、床とにらめっこしている。それゆえに、つばさは今の光の顔をまだ確認できていない。

 もう、こんなくだらない茶番はやめにしないか?


「おい、光、偽の純粋無垢な顔をして、いたずらをするのはもうやめろ」

「あ、うん、さすがに趣味が悪いか」


*****


「てか、コラボ配信って言ったって、一体、何をするっていうんだい?」


 私はつばさに訊ねた。


「その点は別にくりばいたるのほうに判断を委ねるよ。元々、迷惑をかけた礼に知名度の高めてあげるためのコラボ配信なのだから」


 それは、それは、ずいぶんと我々は下に見られているな。


「ていうか、今も絶賛迷惑をかけているんだけどな」

「今からでも、ほかのジェネリックバーチャルリアリティーの人間を呼ぼうか?つばさ」

「多分、今、新幹線で向かっていったると思うけど」


 それはいいことを聞いた。

 ここはJR大阪駅近くであるからして、新幹線が新大阪に着けば、それはもう、すぐだ。

 だから、多分、そろそろ……。


「もう!つばさ!勝手にくりばいたるに一人で行くの止めてよ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る