転生したら某自動車会社の期間工だった件

りゅうちゃん

第1話 某自動車のせいで客の金焦がしちゃった件

 どうしてこんなことになったのだろうか。

 筋の良い投資案件だったはずだ。自動車の電動化は必須であり、間違いなくこれから発展する事業であった。しかも非常に画期的な技術が開発され、量産化が見えてきていた。俺は信用できる筋の開発の内部情報を手に入れて量産化するベンチャーに投資することにした。ただ、情報が情報だけに会社には報告できないので、信用できる資本家から少なくない金を預かり自分の資産も合わせ投資した。

 だが、そのベンチャーのユーザーである某自動車が不正問題を起こしたことで計画は頓挫。資金繰りの厳しいベンチャーは一旦解散。それだけであれば、多少減るとはいえ投資した金を引き上げれば良いだけだが、会計責任者が投資された金額を横領して、海外に逃げてしまい、回収の目途がつかない。刑事事件にもなるだろうが、俺は利益相反で当然会社はクビ、さらに会社の信用を貶めたことで訴えられる可能性もある。さらに、金を預かった資本家は少しヤバい人間で、金を失ったと聞けばただでは済まないだろう。このまま逃げるか。いや俺を殺したところで金は戻ってこないのだから、会社にも黙っていてもらい、一生かかってでも返してゆくと言って許して貰うか。今回はイレギュラー、そう不可抗力だ、許してくれるだろう。いや、そんな甘いことは無い。この業界は一度でもケチが付けば終わり。俺は投資家として終わったんだ。もう終わりだ。

 そう思うと、気が遠くなって・・・・・・

 

 「こら、ぼーっとしてんじゃないよ!」

 はあ!、どこだここは。意識は富んでいたようだが、作業は無意識で進めていたみたいだ。下行程のスタッフが文句を言っている。何をしているのか分からないが、体が自然と動く。アームに引っ掛けられたドアをボデーに取り付ける。単純であるが、段取り良くやらないと、どんどんボデーが詰まってくる。急ぐ必要は無いが送らせることは出来ない。電動ドライバーを片手にガンガン締めて行く。かなり雑にやっているが、周りも大体同じ。とにかく流れを留めないそれが全て。

 というか、なんだ!ここは件の自動車会社、田中発動機の組み立て工場ではないか。俺はここの期間工。なぜに。もしかしてこれは機密情報で一儲けしようとした俺への罰か。いったい俺は何のためにここに飛ばされたのであろうか。

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