かぐや姫の真実

梅春

第1話

「おおっ、これはなんと美しい。光る君。わが元へ」

 帝はそう言い、長く鹿の足のように引き締まった腕を私のほうへと寄せました。

 いけない。また、私は罪を犯してしまう。恋をしてしまう。


 そう思いましたが、もう遅かった。私の視線は帝に吸い寄せられ、決して離れることはなかった。


「光る君はあなたでございます。ミカド・・・」

 触れた帝の手のひらは熱く、正気に戻った私ははっとして手を放しました。


 やっと刑期があけるというのに・・・しかし、帝はそれを許さなかった。

 力強く私を引き寄せると、あっという間に厚い胸に抱きしめた。


 鼻腔を強い臭気が攻めたてます。

 風雅な香がたきしめられた着物、そして、その中に混じる男の汗の匂い。


 それは目の前の輝かんばかりに美しい男から煙のように発され続けているのです。


「ああ、たまらない」

 こんなことを口にする女をだらしなく、みっともないと思うでしょうか。

 帝はそんな私の気持ちに答えるかのように、にっと笑われました。


 少しあがった右側の口角に視線が奪われました。

 この男は美しいだけでなく、たくましい。


 抱きしめられただけで、その硬い肉付きにとろけそうになりました。

 きっと、この男との夜は甘く、そして激しい。


 私の目元はとろんとたるみ、ゆるんでいた違いありません。

 欲にただれた、そのだらしない目元を帝はしっかりと見つめて返すのです。


 賢さも備えていることは、青いほど清潔に輝く白目に包まれた黒目が証明しています。


「帝、いけません。私は・・・」

「何も言うな・・・」


 帝の冷たく薄い唇が私の厚く情熱的な唇を包みます。

 赤い紅が汚されていきます。


 二人で汚していきます。すべてを汚してみたい、できるものなら。

 食べられてしまうかもしれない。


 そんな口づけをされながら、私は帝の体をまさぐり続けました。

 この男が欲しい。抱かれたい。一瞬でもすべてをモノにしたい。


 そして、大きく温かな手に導かれるままに、帝の中心に手を伸ばしました。

 そこは、私が出てきた竹ほどに硬く、抑えると大きな力で盛り返してきます。打ち返す力に、帝を感じました。


 しかし、これはさすがにいけません。あまりにもはしたないではありませんか。

 私は一瞬怖じて、手を止めました。


「もうおしまいか?」


 欲に白く輝く目に問われ、私は大きく首を振りました。幼子がいやいやとぐずるように。

 帝は満足気に微笑み、私を抱く手に力をこめました。


「ああ・・・」

 声がもれました。


 それほどまでに狂おしい。あっという間に。でも、圧倒的に。

 恋心もまだ確かめてないのに、、、否、男と女の欲だけでもいい。欲だけがいい。


 この人と男と女になれないなら、なんのために女に生まれてきたのだろう。


 私はもう何も考えられなくなり、帝がそうしたように、帝の手を己の中心へと導いたのでした。

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