第31話 部活動?
「いや、普通に考えて無理でしょ」
谷根千で二人時間をした翌日の放課後。
いつも通り保健室で集合した俺と雪野は、保健室の佐野先生に俺たちの活動を部活にできないか相談したのだが……。
「まあ仮に顧問は私がなってあげてもいいけど、校外活動がメインだし、部員はあなたたち二人だけだし、何より……」
「な、何より?」
「あんたらが放課後に乳繰り合ってるだけの活動が部活になるわけないでしょ」
「言い方!」
「乳繰り? 温森くん、どういう意味?」
「ほら、雪野が反応しちゃったでしょ!」
「あー、うっさいうっさい」
佐野先生が厄介そうに言う。
「そもそもなんで部活やりたいのよ? 温森くんは帰宅部フツ面陰キャ童貞じゃない」
「とても教師が言ってるとは思えないセリフっすね。俺がキレやすい陰キャ童貞だったら出るとこ出てますけど」
「温森くん、フツ面陰キャ童貞って何?」
「またこの流れ、勘弁してくれよ雪野……」
「ん?」
俗語を知らない雪野はお母さんに大切に育てられたんだなぁ……と感心する反面、皺寄せが俺に来ているのも事実。
「ねえ佐野先生、この活動を部活動にしたい」
「あのね雪野……なんでもかんでも部活にできないし、色々と申請が通らないと思うの」
「……佐野先生の力でもどうにもできない?」
「新卒一年目の私の力なんてアリンコよ。雪野こそ、なんでそんなに部活をやりたいの?」
「わたし……みんなみたいに部活動をやってみたいって思った。中学生の時も保健室登校だったから……」
「雪野……」
佐野先生は驚いた顔をしていたが、同時に悔しそうに眉間を顰める。
「雪野の気持ちは分かるけど、こればっかりはね……」
「……むぅ」
雪野は残念そうにぷくっと頬を膨らませる。
今回ばかりは佐野先生の言い分が正しいだけに、俺も下手なこと言えない。
「ごめんね、雪野」
佐野先生は雪野のことになると声色が優しくなる。
俺の時は冷たいのによ。
「なぁ、雪野、今回ばかりは諦めないか?」
「……でも」
いつもは比較的物分かりが良い雪野だが、部活動をやりたいという気持ちは想像以上に強かったらしい。
そこまで雪野は……。
こうなったら……仕方ない、あいつだけは頼りたくないと思っていたんだが……。
「俺、ちょっと話ができそうなヤツに相談してみるよ。少しは打開策が見つかるかもしれない」
「ほんと?」
「ああ。やれることだけやってみようぜ」
この場では雪野を安心させたかった俺だが、翌日アイツに自分から話しかけなきゃいけないと思うと、胃が痛かった。
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