第23話 参拝する天使


 雪野と一緒に乙女稲荷神社を参拝した後は、根津神社の方へ戻る。


「なぁ、機嫌直せよ雪野」

「…………むぅ」


 なぜか雪野は不機嫌になってしまった。

 やっぱ俺が余計なことを言ってしまったからだろうか……。


「もしかしてさ……さっき俺が雪野のこと理解者面したからか?」

「え?」

「雪野は毎日大変な病気と闘っているのに、まだ出会って短い俺が理解者みたいなことを言ったから、不機嫌なんじゃ」

「ち、違うっ!」


 雪野は小さい声でも力強く否定した。

 雪野がこんな反応をするなんて……。


「わたしは……むしろ嬉しくて」

「え、嬉しい?」

「温森くんがわたしの理解者だって……わたしの病気のこと、ちゃんと理解してくれてるって……」

「それはそうに決まってるが……だからってなんで怒ってたんだよ」

「だ、だって……素直に嬉しいって言うのが恥ずかしくて……だから不機嫌になっちゃった」


 いやいや、嬉しいのに不機嫌ってどういうことだよ。

 雪野は時々不思議なことを口にするから理解に困る。

 理解者なのに理解に困るって……俺、こいつの理解者である自信がなくなって来た。


「と、とにかく機嫌直してくれ」

「……やっぱやだ」

「なんでだよ! 直す流れだったろ!」

「つーん」


 雪野はわざと怒ったフリをしながらそっぽを向く。

 これはきっとアレを要求してるんだな……。


「わ……分かった。じゃあ後でスイーツ奢ってやるからさ」

「スイーツっ……やっぱり機嫌直すっ」


 雪野は明るい表情に変わると、あっさり機嫌を直す。

 調子の良いヤツめ。

 雪野は思っていたよりもチョロい。


 ✳︎✳︎


 神社の参拝客がチラホラいるので、それについて行きながら俺たちも参拝して行く。


「病気が早く治るようにお願いしないと」

「そう、だな」


 こうして隣にいても、雪野の病気の発作が起きる気配はない。

 理由は未だに分からないけど、雪野はお出かけをしていればナルコレプシーにならないのだろうか。

 でもお母さんとのお出かけ中は寝ちゃうとか言っていたし……。


 謎は多いままだが、俺は賽銭箱に100円を入れると雪野の病気が治ることを願った。

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