第19話 天使の甘々パンチ
次はどこに行くべきか。
前回は俺の希望で抹茶巡りになったわけだが、雪野もたまたま抹茶が好きだったから楽しかったけど、いつも俺が行くのは結構渋い所もある。
それこそ新宿御苑とか、御所とか。
雪野は盲目的に抹茶スイーツが好きだったりして見た目に反して意外とお子様気質だし、この手の場所はきっと退屈するだろうなぁ……。
俺が横目で薄らと雪野の方を見ると、雪野は案の定、スマホでピュー●ランドを調べていた。
「こことかどうかな……? なんか可愛いのいっぱいいるから良さそう」
どうやらサンリ●キャラクターの知識には明るくないらしく、知らないけど可愛いからという理由で俺にピュー●ランドを勧めてくる。
「あのな、お前は女子だからこの手の遊園地とかアミューズメントパークに行っても浮かないかもしれないが、俺は男だぞ」
「それ差別……男の子が可愛いくても良い」
「そうじゃなくてだな」
どうやら雪野は『可愛いければ良い』という価値観に囚われているようだ。
そりゃ、そもそも俺と雪野じゃ好きな物も行きたい場所も違うわけだしそれが合致したこの前の浅草は奇跡に近いものだったと思う。
「あのな雪野。俺がいつもしてる自分時間は誰でも楽しめる場所を歩くんじゃなくて、自分だけの楽しい物を見つけるのが目標なんだ」
「自分だけの……?」
「遊園地とか、アミューズメントパークとか、行けば楽しいのが分かってる場所に出向くのは楽しくて当たり前だ。でも楽しい場所を自分で見つけたらもっと楽しいと思わないか?」
「……確かに。この前の浅草も、最初は楽しいと思わなかったけど、歩いてみたら楽しいことばかりだった」
「楽しいかどうかは自分次第だ。自分時間が自分の『楽しい』を見つける時間なら、二人時間は俺たち二人の『楽しい』を見つける時間にしないか?」
「うん。わたしもそうしたい。わたしと温森くんの二人が楽しい時間……見つけたい」
雪野は俺がこれまでしてきた自分時間の意味を理解してくれたみたいだった。
そう、俺は自分の楽しいを見つけるために街を歩くのが趣味だった。
SNSとかで話題の場所へ行って、そこが本当に楽しいのか判断するのも一つの醍醐味だし、その中で自分だけの楽しいを見つけるのが自分時間の活動内容だったからな。
「あんたらさー、いつまでイチャついんてんの?」
コーヒー片手にソファまで来た佐野先生は、相変わらず無駄に野次を入れてくる。
「お出かけするならどこでもいいじゃない」
「その『どこでも』が案外難しいんですけど」
「じゃあさ、雪野は何かしたいこととかないの?」
「わたしがしたいこと……じゃあ」
「え、何かあるのか?」
「いっぱい歩きたい。長めのお散歩してみたい」
意外なリクエストだった。
てっきりまた食い意地を張るのかと思ったが……歩きたいのか。
「なに雪野、もしかしてこの前のスイーツで太ったから運動したいのぉ?」
「……ノーコメント」
なるほど。太ったのか。
俺が勝手にそうだと思っていると、雪野が隣から弱々しいパンチして来る。
「なにすんだよ雪野」
「違う……から!」
ムスッとした顔で静かな怒りを見せる雪野。
雪野って怒るとこんな感じなんだな。
それにしても歩くのがメインなお散歩か。
「あ、それならこれはどうだ?」
俺は一つの案を提案する。
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