第17話 保健室にて


 天使こと雪野小道と定期的に出掛けることになった翌週のこと。

 今週はもう保健委員の仕事が無いのだが、俺は保健室へ向かっている。


 別に怪我をしたわけではない。

 それなのに保健室へ行く理由は一つ、雪野と次に行く場所を話すためだ。


「失礼します」

「おっ! よく来たねナンパ男〜」


 保健室に居たのは雪野ではなく、この高校の養護教諭である佐野先生。

 相変わらず若々しい赤のブラウスと黒のミニスカートという服装で、足にはパンストに赤いピンヒールを履いている。


「へいへーい、ナンパ男〜」

「うるさいですよ。なんですかそのナンパ男って」

「だって雪野のことナンパしたから、また二人でお出かけすることになったんでしょ? この口説き上手め〜」


 佐野先生は俺に近づいてくると、俺の肩に手を掛けてダル絡みしてくり。

 するとその無駄にデカい胸が俺の身体に押し付けられた……でっっか。


「あ、ナンパ男があたしの胸意識してる」

「してないです」

「うわぁ、貧乳の雪野が聴いたら悲しむよ? およよー」


 はぁ……この人教師じゃなかったら、こんな俺でも今ごろ手が出てるだろうな。


「あの、そんなことより雪野はどこですか?」

「そんなこと!? 保健室の美人教師の爆乳がそんなこと!? この童貞! 喧嘩売ってんの!?」


 気が触れてる佐野先生は、怒り顔で執拗に自分の胸を俺の腕に押し当てて来る。

 こう何度も当てられてると、ありがたみが無くなるなぁ……。


「佐野先生っていつもこんな感じなんですか?」

「何よ、こんな感じって」

「ウザ絡みしてきたりとか」

「ふ、普段はしてないし!」

「彼氏いないでしょ」

「うるさい! それ以上言うなら雪野に有る事無い事言ってやるから!」

「はいはい勝手にどうぞ。それで、肝心の雪野は?」


 スムーズに話を戻すと佐野先生はやっと落ち着きを取り戻す。


「雪野なら、お手洗い。すぐ戻ってくるから待ってなよ」

「そうですか」


 なら保健室で待つことに——。


「先生!」


 パシャンと勢い良く保健室の引き戸が開け放たれて、廊下から肌が陽に焼けたユニフォーム姿の女子生徒が入ってきた。


「あのっ! そこで天使ちゃんが!」


「「え?」」

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