第1話 漫才師

 僕らは馬4頭とロバ1頭を引き連れて、東方にある魔女ウィッチが住む森を目指している。

 馬は重騎士ヘヴィナイトのタムリン用に大型1頭、僕と予備用の中型が2頭、荷物持ポーターちのプロト用に小型1頭、そして荷物用にロバが1頭だ。

 プロトはマジックバックも買ってもらったので荷物は自分が持ちますと言い張っていたが、お兄ちゃんとしてはかわいい弟に重い荷物など持たせられないのだよ…荷物持ポーターちジョブとは言ってもね!それに経費の支払いはロデール王持ちだからね。

 もしかすると、【ロイヤルワラント】にいた時よりパーティーの運営費は潤沢かも知れない。

 

「ベイカー、アンタの知り合いの魔女が住んでいる森まで後どのくらいなんだ?」

 大型の馬に乗ってるはずなのに、馬が小さく見えてしまうタムリンが手綱を引きつつ尋ねる。

「王都から5日程だから、明日には到着出来ると思うよ」

「どんな魔女さんなんですか?」

 すっかり乗馬に慣れたプロトが聞いてきた。

 自らが馬に乗る機会なかったプロトは最初のうち、何度か馬の手綱を引いて歩き出そうとするおっちょこちょいな仕草で僕を癒してくれた。

「ん~、伝説にして最強の魔法使いである引きこもりのポンコツ魔女だよ」

「凄いのか凄くないのか微妙な雰囲気だな」


「そうなんすよ、姉さん姉さん…聞いてもらえます?結構長くなりますけど…」

「いや…ちょっと今は忙しいから無理かなぁ」

 タムリンの目が泳ぐ。

「なんでです姉さん?馬乗ってるだけじゃないすか!聞いてくださいよ、めんどくさい魔女の話」

「なんか…いつにも増してベイカーがめんどくさい。アンタのジョブいつから漫才師コメディアンになったんだ?」

 タムリンは馬の脇腹に脚を当てると、加速して一気に逃げ去って行った。

「あ!姉さーん…じゃあ、プロトっち聞いてくれるかな?」

「プロトっち?自分は今日の野営地の準備がありますので、ちょっと…」

と言うと、プロトも馬の脇腹に脚を当てると一目散に走り去って行ってしまった。

「え、まだ昼だよ…2人とも最近ちょっと冷たくない?」

 

 

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