傭兵

Grisly

傭兵

R王国に、緊張が走っていた。


金の産出国であるこの国は、

経済的に豊かであり、資源を狙われやすい。


かねてより仲の悪かった隣国が

いつ攻めてきてもおかしく無い状況だった。




議会が開かれ、徹底的に討論された。


戦争となれば、被害は計り知れない。

幸いにも金は沢山あるのだから、

プロに頼んではどうか。


金持ちとは、人に任せるのが上手い。




世界最強の傭兵の国から

部隊が派遣されて来た。のだが…


伸ばしっぱなしで手入れされていない

髭、髪。


所々欠けている黄色い歯。


歩き方も何というかしょぼしょぼしている。


頼り無い者達ばかり。




部隊長が挨拶した。


「こんにちは。

 この度は雇ってくれてありがとう。


 がんばるぞ。」


部隊長の口からは

もはや黒と言っても良い色の歯が…




何とも頼りない短い挨拶だ。

高い金を払った手前、

流石に不安になって来た国王。


「貴方達は、

 世界最高の傭兵部隊なんですよね。

 高い金を払っている。

 期待していますよ。」



すると、この部隊長、恐ろしい事を言い出す。


「確かに、

 私達は世界最強の

 傭兵の国から派遣されて来た。


 しかし、私の部隊はその国で1番弱い。

 出世コースからも外れ、虚しい物だ。

 歯の治療費も払えない程に。」


部隊長の口からは

もはや黒と言っても良い色の歯が…




国王は、少しの怒りを感じながら、

極めて冷静に質問した。

金持ちとは、冷静な物である。


「それはだめです。


 国の命運がかかっている。

 負けられない戦いに

 ふざけてもらっては困ります。


 支払った高い金を返して下さい。」


冷静だが、有無を言わさない態度。

金持ちとはそういう物である。




しかし、部隊長、言われ慣れているのか、

何も動じなかった。

そしてこう話す。


「確かに私達は最弱の部隊だが、

 傭兵として仕事するのは、

 国中で1番多い部隊なのだ。


 もし失敗したら報酬は全部返すので、

 一つ任せてみてくれないか。」


部隊長の口からは

もはや黒と言っても良い色の歯が…




国王は頷いた。

よくわからない者でも、

チャンスは平等に与えるのが、

金持ちと言う物である。




結果は驚く程、早く肩がついた。

たった3日で隣国は焦土と化し、

生存者はゼロ。


あの頼りない彼等がどうやったのかは

国王には分からなかったが、

彼に分かる事が一つだけ。


「最弱の部隊なので

 この位の被害で済んでいるのだ。


 だから彼等が最も働かされているのだ。

 最強の部隊が来ていたら、

 今頃私達の国も…」

 


 




 

 











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傭兵 Grisly @grisly

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