第6章104話:戦利品回収

<他者視点>


そんなセレナの様子を、空から眺める者がいた。


コウモリである。


10センチぐらいのサイズのコウモリ。


二本の黒いツノが生えている。


普通の獣ではない。


魔物である。


魔族に使役されている従魔じゅうまであった。


「大変だ!」


コウモリは、魔族の眷属けんぞくゆえに、言語を話すことができる。


このコウモリ魔は、上空から、ラザードとセレナの戦闘を観察していた。


ラザードが勝つかと思っていたが、結果は逆。


セレナの勝利に終わった。


「まさか、人間が、ラザード様に勝つなんて!」


しかも、ただ勝っただけじゃない。


圧勝である。


ラザードは、セレナに、手も足も出ていなかった。


もともと人間が、魔族に勝利するケースは、そう多くない。


地力じりきが違いすぎるので、たいてい、魔族による一方的な虐殺となる。


ただ、人間にだって強い個体はいる。


そういうのと出くわしたとき、魔族はボコボコに叩きのめされて、駆除される。


さながらラザードのように。


「あるじ様たちに知らせないと!」


コウモリ魔はひとり、つぶやく。


魔族を楽勝で殺せる、強い人間の個体に関する情報は、報告しなければならない。


コウモリ魔は、バサバサと翼をはためかせ。


己を使役する主人のもとへと、帰っていくのであった。







<セレナ視点>


遺体へのご冥福を祈ったあと。


私は、ふたたびラザードのもとへと戻る。


首を失ったラザードの遺体。


その遺体から、戦利品を回収することにする。


ラザードはアイテムバッグを携帯していない。


ゆえに、たくさん戦利品を回収できそうにはなかった。


とりあえず、財布袋さいふぶくろを持っていたので、いただいておく。


中身は金貨32枚ほど入っているようだった。


金貨1枚=10000リソル=10000円


……という価値だ。


つまり金貨32枚とは、32万リソル。


日本円にすると32万円。


いやあ、美味しいね。


とりあえず、その財布袋をアイテムバッグへと収納する。


さらに。


「これももらっていきましょうか」


と、私はチョコレート・ハンドを使って、真紅の鉄棍てっこんを拾い上げた。


ラザードが使っていた武器。


魔族の武器だし、高値で売れるかもしれない。


次の街にたどりついたら、武器屋か、冒険者ギルドにでも買い取ってもらうことにしよう。


(ほかに目ぼしいものは無さそうですね)


ラザードは荷物が少ない。


ゆえに、回収できるものは少なかった。


まあ、お金と武器を回収できたなら、十分かな。


戦利品の回収は終了としよう。


用が済んだので、私はふたたび街道を歩き出した。







夕方。


街道を歩き続けた私は、街にたどりついた。


名前は【ユイリーンの街】。


赤い屋根の家が建ち並ぶ、穏やかな街である。


夕陽に染まった街並まちなみは、とても美しい。


とりあえず私は、宿屋を探すことにした。


路地を少しいったところにある、素朴な二階建にかいだての宿を見つけたので、中に入る。


「一泊、3000リソルです」


と、受付のお姉さんにいわれて、お金を払う。


この宿は、このお姉さんがりしているようだ。


私は二階の部屋を案内される。


夕食を食べてから、就寝した。


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