第4章78話:剣撃

すると青髪ロンゲが嘲笑した。


「ハハハッ、オレらを殺すだと? 状況見て言えよガキ。3対1だぞ?」


「3対1といっても、そのうち1人はジルさんですからね」


と私は、ジルを見ながら答えた。


ジルは歯ぎしりしつつも、冷や汗を浮かべている。


ヒゲのオッサンが言った。


「ジルをずいぶん可愛がってくれたようだな、お嬢ちゃん。まだ10歳そこらの年でジルに勝つなんて、とんでもないことだ。どうだ? 君も殺し屋をやらないか? 間違いなく、この業界で有名になれるぞ」


「……? なるわけないでしょう、殺し屋なんて」


するとヒゲのオッサンが鷹揚おうように笑い、言った。


「まあ、そうだよな。言ってみただけさ」


それからヒゲのオッサンは、告げた。


「じゃあ、殺すか。本当は確実をすため、人質を取ってからにしたかったんだが……仕方ない」


「ハハハ、オレはこっちのほうが燃えるからいいけどな!」


と青髪ロンゲは応じた。


ジルだけは険しい顔を浮かべて、押し黙っていた。


ヒゲのオッサンが言った。


「一応、名乗っておこう。俺はドレアスだ。こいつはニッシュ。ジルの紹介はいらないな?」


「ええ。必要ありません」


「お嬢ちゃんの名前は?」


「……ジルさんに聞いたなら、知ってるんじゃないですか?」


どうせジルから私のことは、大半聞いているだろう。


「あなたがたは、ジルさんに頼まれて、私を殺そうと画策かくさくしていたんでしょう?」


「よくわかったな。その通りだ」


やはりか。


つまり、これはジルの私に対する復讐というわけだ。


ドレアスとニッシュは、ジルに頼まれたか、雇われた……といったところか。


「私に復讐しようなど、愚かにも程がありますね」


そして私は告げる。


チョコレートを殺すことなど、誰にもできやしないのに」


するとニッシュが、殺気を高めた。


「そういうセリフはよォ」


ニッシュが、背中の剣に手をかけた。


「この剣を受けてから言えよ」


次の瞬間。


ニッシュが地を蹴る。


両手に剣を持った二刀流にとうりゅうの状態。


目にもまらぬ速さで加速し―――迫ってきた。


振るわれる剣撃けんげき


(速い……けど)


かわせる。


私は身をそらし、ニッシュの斬撃を避けた。


ニッシュの剣が虚空こくうを切った――――


はずだった。


「!!?」


直後。


私の肩に斬傷ざんしょうが走る。


血が噴き出した。


なんだ、いまのは?


確かに斬撃をかわしたはずなのに……斬られた?


わけがわからない現象に混乱する。


「ラァッ!!」


ニッシュの二撃目にげきめ


二刀流ゆえに、二撃目までのタイムラグが少ない。


振り下ろされる斬撃。


私は飛び退いて回避した。


「……!」


ニッシュはまた空振からぶった。


しかし、直後、ニッシュのすぐそばにあった大樹に切り傷が走った。


そこで私は気づく。


「なるほど……そういうスキルですか」


「ははは、理解したか? そうだ。オレのスキルは、一度の斬撃で、複数回ふくすうかいの斬撃を放つ……【加撃斬火かげきざんか】!」


一度で複数回、斬りつける。


だから私は、避けたはずなのに斬られたのか。


納得する。


「なんか、ザカルさんみたいな能力ですね」


と私は言った。


するとドレアスが聞いてくる。


「ザカルを知ってるのか?」


「ええ、ザカルさんは私が殺しましたから」


と答えつつ。


私は思った。


あおるならココだと!


なので私は、一発目の煽りをかますことにした。


「でもこれなら、ニッシュさんより、ザカルさんのほうが厄介ですね」


「あ?」


とニッシュは顔をしかめた。


「だって1度で2度斬られるよりも、遠くから剣風けんぷうを打たれるほうが、面倒じゃないですか。ニッシュさんの攻撃って、ぶっちゃけザカルさんの下位互換かいごかんですよね」


「……」


ニッシュは絶句する。


直後、彼は怒りで血管を浮き上がらせた。

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