第3章57話:公爵の来訪

<セレナ視点>


気絶したジルが、担架で運ばれていく。


フィーナさんと私は、ネリアンヌの前に立つ。


フィーナさんが言った。


「決闘の勝者はセレナ殿ですので、ネリアンヌ殿は、セレナ殿の要求を履行りこうするようにしてください」


「くっ……」


ネリアンヌは歯噛はがみする。


私は言った。


「とりあえず山小屋の修理費をいただきたいです。すぐに修理をしてもらいたいので」


「……」


ネリアンヌが押し黙る。


フィーナさんがじっとネリアンヌを見つめて、言った。


「ネリアンヌ殿」


「はぁ……ああはいはい、わかったわよ! 払えばいいんでしょ払えば!」


と、ふてくされたようにネリアンヌが答えた。


さらに私を睨みながら。


「セレナ……あなた、覚えてなさいよ」


と言った。


いやいや、覚えてなさいって……


要求内容わかってるのかな?


金輪際、私たちに手出しするなって話なんだけど……


ネリアンヌの口振りだと、またちょっかい出してくる可能性があるな。


念押しで釘を刺しておこうか。


……と口を開きかけたときだった。


ギャラリーたちがどよめきをあげる。


「き、貴族だ」


「領主さまか?」


「いや、違う方だ」


といった声が口々にもれている。


貴族?


私は、ギャラリーたちの視線を追った。


すると、明らかに貴族とわかる女性が歩いてきていた。


背後には複数の男女が、追従するように歩いている。


そのうちの一人は……クレアベル!?


帰って来たんだ!


でも、貴族と一緒に歩いているのか。


貴族はこちらの存在に気づいた。


近寄ってくる。


私たちの前で立ち止まると、自己紹介をした。


「私は、ハルブレス公爵領の領主、ソルフェーユ・ド・フォン・ガル・ハルブレスです」


ソルフェーユ公爵。


髪は青色で、ほつれたロングヘア。


目は緑色。


身長は176cmぐらい。


服は深い青色のドレス。


物静かそうな顔立ちながら、凛とした雰囲気も感じさせる。


「ソルフェーユ公爵……」


とネリアンヌが驚いたような声をあげた。


ソルフェーユ公爵は告げた。


「本日は、とある通達をするため、ここメルディナ領を訪れました」


一拍置いてから、ソルフェーユ公爵はネリアンヌに目を向ける。


そして宣告する。


「先日、国の決定により、メルディナ家はお取り潰しとなりました」


「!!!?」


ネリアンヌは驚愕きょうがくに目を見開く。


周囲にも動揺が広がる。


この領地を治めるメルディナ伯爵家。


それがお取り潰しになったと……そう宣言したのか。


ソルフェーユ公爵は続ける。


「そしてネリアンヌ・メルディナ嬢……あなたを、複数の犯罪に関する容疑で逮捕させていただきます」


「なっ!?」


ソルフェーユ公爵の言葉に、ネリアンヌが愕然がくぜんとし、青ざめる。


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