第3章40話:戦利品

<セレナ視点>



森。


ザカルたちを討伐し終えた私は、帰路についていた。


鬱蒼とした森林を歩く。


私の右斜みぎななうしろ、頭上あたり……


そこにチョコレートの糸を伸ばしてあり、その糸の先端部分が花びらのような形に広がっている。


花びらの形をしたかごである。


――――今回、盗賊を倒したことで、たくさんの戦利品をゲットすることができた。


だから、この【チョコレートかご】の中に、戦利品を放り込むことにした。


大量の荷物を突っ込んでも重さを感じないので便利な籠である。






さて。


私は歩きながら、さきほどの戦いについて考える。


「チョコレート・ゴーレムは結構強いですけど、制限も多そうですね」


――――【チョコレート・ゴーレム】。


さきほどザカルに襲撃させたチョコレートの魔人。


私は、このゴーレムで出来ること、出来ないことを整理していた。


主に、以下の二つのことがいえる。


1:チョコレート・ゴーレムを動かせるのは1体だけである。


2:チョコレート・ゴーレムに複雑な命令を実行させることは無理。


ということだ。


人型の物体を動かすのは、簡単ではない。


しかも、魔力を大幅に食う。


明らかに体内の魔法回路に負担がかかっているのがわかる。


あまりバンバン使っていける代物ではない。


チョコレート・ゴーレムは、ここぞというタイミングでのみ使用することにしよう。







あと、もう一つ考えなければいけないことがある。


ネリアンヌのことだ。


―――――実は、ザカルを殺す前に、少しだけ尋問をおこなった。


死の恐怖に飲まれ、完全に屈服していたザカルへの尋問はラクだった。


で、ザカルたちが結局、山で何をしていたのか問うたところ……


ネリアンヌによって『セレナを拉致する命令』を受けたのだと、ザカルは白状した。


つまり私を誘拐するために、キトレル山を散策していたらしい。


(ネリアンヌに、完全に目をつけられてるね……私)


と思った。


かなり厄介な話だ。


なにしろ、ネリアンヌは社会的権力のある貴族令嬢。


力でどうこうするのは難しいだろう。


(この問題は、あとでクレアベルに相談したほうがいいかもね)


そう心に決める。


ただそれは後で、だ。


いまは先に、ザカルたちから回収できた戦利品の確認をしたい。








森を抜ける。


崖の上であった。


山の緑や、遠くの岩山が見渡せる崖。


良い眺めである。


ここで、盗賊から入手できた戦利品をチェックすることにした。


「まずは、荷物をおろして……と」


花びらの形をしたチョコレート籠を、地面に置く。


私は籠の中に入った戦利品たちを見下ろした。


剣、短剣、弓。


胸当て、腰当て、脛当て。


ポーションや毒消し類。


財布。


……などなど。


「結構いっぱい取れましたね」


盗賊たちの荷物は根こそぎ貰ってきた。


この世界では、盗賊を討伐した場合、その戦利品は討伐者のモノとなる決まりがある。


だから盗賊退治は、うまくいけばメチャクチャ稼げる商売となる。


今回倒したザカルは、アイテムバッグを持っていた。


もちろん戦利品として籠の中に確保してある。


アイテムバッグの中身を確認するのも楽しみだが……


アイテムバッグそれ自体も高級品であり、美味しすぎる戦利品である。


(さっそく確認してみましょうか)


そう思って、アイテムバッグから中身を取り出していく。


中級ポーション。


中級アンチドーテ。


金銭。


予備のダガー類。


鎧。


魔物の素材。


防腐魔法がほどこされた肉、野菜。


付与効果がありそうな指輪。


……等々、いろいろなアイテムがあった。

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