第1章4話:命
秋が過ぎて。
冬になった。
冬は、思いきり、雪が降る。
山が真っ白になるぐらい、降り積もる。
当然、寒い。
山小屋には暖炉がない。
だから、暖を取るには、
まず、未使用状態の火魔石は、
その火魔石をランタン型の容器にセット。
火魔石に魔力を送り込む。
すると、火魔石の赤色がきらめき始め、熱と、ほのかな光を放ち始める。
この状態で容器を閉じる。
あとは屋内のテキトーな位置に置いておけば、周囲の空気をあたためてくれる。
【火魔石ヒーター】の完成である。
……まあ、一連の作業は、全部クレアベルがやってくれてるんだけどね。
そういう便利なアイテムを駆使しながら、寒い冬を、なんとか乗り越えていく。
――――雪解けの春。
異世界に来てから1年の歳月が流れる。
私にとって二度目の春。
クレアベルは、私を大事に育ててくれた。
そんなある日。
私は、3日ほど近くの村に預けられることになった。
どうやらクレアベルは既婚者だったらしく……
ひさびさに帰ってきた夫と、二人きりで会うつもりらしい。
ちなみに夫の名は、ハンクス。
兵士らしく、普段は軍にいて、なかなか帰ってこられないんだとか。
しかし今回、時間が取れたので街に帰省してきたらしい。
で……
重要なことがある。
クレアベルが、なんと、妊娠した!
街でハンクスと会った際に、新しい命を授かってきたようだ。
おめでとう!
と、私は心の底から祝福した。
けれど。
数ヵ月後――――
不幸が起こった。
なんと、ハンクスが、戦死してしまったのだ。
その報告が、クレアベルのもとへと届けられた。
クレアベルは、ハンクスの死を嘆き悲しみ、涙にくれた。
見ていられないほどだった。
ああ……
やっぱり、戦争なんてロクでもない。
異世界であっても、やはり人という生き物は、わかりあえないものなのか。
しかしクレアベルは、やがて立ち直った。
お腹の中には、新しい命が宿っているのだ。
いつまでも落ち込んでいられないと……クレアベルは奮起した。
結果。
いろいろあったけれど、7ヵ月後。
クレアベルは、無事に出産した。
血のつながりはないが、私の妹となる子どもだ。
名前はアイリス。
山小屋のようなクレアベル宅。
3人目の家族ができたことで、にぎやかになった。
なにしろ、アイリスは本当によく泣く。
赤ん坊とはこんなにも泣くのかと、驚かされる。
でもまあ、家族が増えて、私は幸せな気分だ。
クレアベルも、ハンクスの死は乗り越えて、笑顔が増えたようだった。
立ち直れて、良かった。
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