僕らは何も知らない

桔梗 浬

プロローグ

 プロローグ:


 誰が言い出したんだろう? 

 なぜ行く、なんて言ってしまったんだろう。


 今思えば、不思議な巡り合わせだったんだ。

 そんな訳で、僕たちは久しぶりにここ「鎌倉」に足を運んでいた。運んでしまった。と言ってもいいかもしれない。


 相変わらず駅前は多くの人で賑わっていて、隣接したお土産屋さんにも行列ができていた。さすが古都鎌倉。老若男女問わず皆楽しそうな笑顔を抱え、青空の下歩いている。


 実は最近10代の少年少女がここ「鎌倉」で、神隠しに遭うという噂がネット上を騒がしていた。


 神隠しに遭った子どもたちは今も戻って来ないという。


 だから僕たちは真相を確かめるため、ここ「鎌倉」までやってきたのだ。


 この時の僕たちはただの冒険気取りだった。これから起こることなんて予想もせず、むしろここにいる観光客と同じで、非日常にワクワクしていた。


 だけど僕は…。



* * *


 始まりは、ある少女の呟きからだった。


「これから鎌倉散策! みんなでお参りするんだ〜! 行ってきまーす!」

「これ、絶対食べた方がいいよ! 超美味しぃ〜最高〜! マキちゃん見てる?」


 最初は友達と楽しそうに食べ歩きをしている写真と共に楽しそうなメッセージが綴られていた。


 しばらくすると、メッセージの内容に変化が起きる。


「あれ? みんなとはぐれちゃった。みんなどこ〜?」

「まだこの時間なのに、お店も閉まってる。何でかな? みんなどこ〜? 無視しないでよー」

「あ、やっと人がいた!」


 この頃になると、彼女の呟きに心配するユーザーが続出していた。


『やめろ、いくな』

『引き返した方がいいよ』

『駅まで戻った方がいい』

『その人物に話しかけるな!』

『無視しなー』


「みんなが待ってるって言うから、私も行ってみるね」

「えっ!? 何これ!?」


 それを最後に彼女からのメッセージは途絶た。そして彼女自身も帰ってくることはなかったのだ。


 彼女は一体どこに消えてしまったのか?


 最後の呟きにはには、鶴岡八幡宮が写っていた。



* * *


「まずは、彼女のオススメの店まで行ってみようぜ」

「あ、うん」


 僕は彼女の最後のメッセージを確認し、慌てて友人の背中を追った。

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