第6話 求めていた物
あれからまた1ヶ月程が経った。
僕は基本的に『裏表』を持ち合わせている。
『表』は日常。
『裏』は本質。
僕は度々希咲と連絡を取っていた。
そしてある日の昼間、用足しに店を出たついでに一緒にご飯を食べに行った。
ずっと僕は答えを探していた。
駅前で落ち合って2人で店に入って希咲を目の前にして、冷たい目をしながら机越しに希咲の首を絞た。
「…幸せだ。」
僕がそう漏らすと、希咲は微笑んだ。
僕は無言で希咲の手を引いて店を出た。
そして、首を絞めながら物陰で口付けた。
抱きしめるよりも首を絞めてキスしたい。
言葉を吐くよりも、目を見て微笑みを見たい。
そういうある種壊れた世界を共有できるのは希咲だけだった。
何も言わずとも、希咲は高校生の頃から黙って僕の傍に居てくれた。
僕は、首の手を頬に当てて聞いた。
「結月に勝てそうか?」
「無理」
「なぜ?」
「涼太のことは好き。でも涼太はあたしじゃない。だって、結月が受け入れてくれたら私は要らなくなる。違う?」
「正直な事言うと……」
「うん」
「嫌わない?」
「今さら。私はあなたのすべてが好きなの。嫌いになりようがない。」
僕は希咲を強く抱き締めた。
細くて暖かかった。今にも壊れてしまいそうだった。
「俺、大人になった結月が物足りない。ずっと可愛くてたまらない高校生の結月でいて欲しいのにどんどん大人になってく。なんか冷めてく感じ。」
「じゃあ私は?」
「大人になってくお前がたまらない。会う度会う度綺麗になってく。……誰にも渡したくない。俺だけのお前でいて欲しい。」
「よかった。」
――――――翌月、結月と離婚した。
毎日大人になっていく結月が嫌だった。ずっと可愛い可愛い結月で居て欲しかった。そうすれば可愛い可愛いの中でセーブしながらる愛せるから。。
もしくは全てを受け入れて欲しかった。でもそれが叶わなかった。
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