26 -静かな戦い
ここで力を使うのは極力避けたい。
この付近にハーララの
――短期決戦が必要だ。それでいて自身の
正直な所、新月丸は
己の力を少々、知られた所で大した
しかし今は護るべき仲間が居る。こういう事態になると完全に単独だった頃が気楽に思う。でも、見捨てて自分だけが完全勝利すればいい、と思えるほど新月丸は
(この方法が
そう思った瞬間、自ら口の中に飛び込む。
新月丸の移動速度と獲物を吸引するべく開いた口の力が重なり、とんでもないスピードで口の中に消えていく。口に入った途端、青白い光が更に輝きを増した。色合いは美しいのに、その光は禍々しく見えそれを見た者の心をザワつかせる。
新月丸を口にした後、
「ドラリン、今っす!早くここから離れて目的地方面に飛ぶっすよ!」
「でも、いま、しんげつさまが!!!」
「新月様はきっと大丈夫っす。だから今は僕と新月様を信じて飛ぶっす!」
「わかった!」
そう言うドラリンはそれでも不安があり、少し涙目だ。
「泣かないっす!」
「うん…(グスッ)」
ティールは鞄から少しだけ出て、励ましの意味を込めてドラリンをポンポンと叩いた。
(さて、どうしたものか…)
命喰魚は魂を奪う力を持っている。この空間に入った者は本来、魂を溶かされ残った腐乱死体が…(ん?腐乱死体ってどうなるんだ?
—探究心はお預けである。
(俺の魂に攻撃は通用しないが戦った
(水中でおとなしくしててくれりゃいいものを…面倒くせぇ…)
そんな事を心の中でブツブツと言う。
この魚は普通の魚ではない。
中身は生物としてのあるべき骨や臓器等が全く無かった。
(初めて中に入ってみたが、こんな感じなのか…)
恐らくこれは魔法生物に極めて近い生命体なのだろう、と予測する。
であれば物理的な攻撃には、ある程度の強度があるはずだ。しかし、己の力を敵に知られる材料を残したくはない。力技での撃退を試みる必要に迫られているのを新月丸は悟った。物理攻撃に耐性があるのなら、そこで多少の中和がなされ、もし
(武器に
腰に下げている小さな2本のナイフを1つ取り出す。
少し変わった作りだが、それは現世で売られているカッターナイフと呼ばれるものに似ている。
それを握った途端、細身の剣に
(物理はそんなに得意ではないが、だからこそ戦いの跡が残りにくいんだよな…)
鈍い銀色の刃が黒い光を緩やかに放つ。
それは新月丸の物理的な武器の1つである闇を纏う剣———ダークシャインソード。
何かを察したのだろう。
その途端、周りが不意に真っ赤に変わり、赤い液体がそこかしこから大量に
液体を少し手に取ってみる。
「臭せぇしネバネバしてるし汚ねぇなぁ…」つい、口から出てしまった。
液体が出てくる
広い空間の壁に1周、新月丸はグルリと切り込みを入れる。
切った所からもドロドロと赤い液体が出てくるが、勢いがだんだんと弱まってきたきた気がする。どうやら切られた所に赤い液体が触れると、そこの肉壁を
(これは…
腐食し傷口がみるみる広がり、ドロドロと溶けたその先に外が見える。
まだ空中に居るが風景から
(ここから外に出るか)
そう、思った
魚が内側から2つに切られ、尾のほうが落下を初めたのだ。
さっさと中央付近から移動しないと頭側が新月丸の上から降ってきてしまう。
(そういや現世で果物からこうやってキャラが出てくるアニメがあった気がするなぁ…)
———輪切りの巨大な生魚から赤い液体まみれで出てくる男の姿に見た事がある気がするという、そのアニメのような
ティールとドラリンは無事か?と見渡すと近くを飛び様子を伺う姿があり、気配を辿るとケケイシも対岸へ無事に辿り着いている。とりあえず、今、この場の脅威は終わった。
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