16 -霊を視る者「リック」
いつもなら通販サイトへの出品をしてくれている時間なんだけど
私に何も話してくれないけれど、たぶん国で問題が起きたんじゃないかな。
本来なら私が仕入れも出品もしなければならないのに、それらを全部してくれている。
ネガティブ思考かつ不運の私は
大変な事が起きたのかもしれない。もしかしたらそれは、私のせいかもしれない。それなら私に何か出来る事はないのかな。のんびりしていてと言われても、気になって仕方ない。
「のんびりしてていいって言われたんだから、のんびり待っていていいと思うよ」
声をかけてくれたのは
私が住んでいる家には多くの
今借りているこの賃貸物件は築38年と古いけれど、やけに強固な作りをしていて、設計した人の思い入れの強さが伝わる良い建物と思う。これを建築した職人も丁寧な仕事をしたのか、暖かい気持ちが篭っていた。
その気配に惹かれるのかもしれない。
この家には各部屋にそれぞれ、その部屋を護る精霊めいたものが居着いている。
この物件を借りた理由は「責任もって迷惑かけず飼えるなら基本、どんな生き物を飼っても良い」という魅力的な条件からだったけど、今となってはここにして本当に良かった。
私には人間の友人は多くはないけれど、
だから修学旅行なんか行きたくなかったのに、学校ってのは本当に変な所なんだよ。
行きたくないと言えば、普段はイジメから庇わない先生も「最後の思い出だから行こう、皆んなも来て欲しいって言ってるよ」なんて
そこまで言うのなら、と頑張って行ったんだけど結果はいつも通り。
バスの中、隣に座ってくれる人は居ない。ホテルに1人部屋は用意してくれないから、班ごとに7人で泊ったけど私だけポツンと外れ、他の子達は楽しそうに話をしていた。歴史的な建物を巡る時も有名な大きな滝を見る時も、周りに同級生がいるのに私は孤独。
こうなるのが解っていたから修学旅行に行きたく無い、と言ったのに誘ってきた担任も学級委員長も責任を取らない。来させるだけ来させたら後はほったらかし。
つまらないつまらない。
やっぱり来なければ良かった。
そう、思っていた時に話しかけてくれたのは地元にいる幽霊だった。
さっきから音がしているので、何かが居るって気付いていた。
だから怖くはない。
「私が見えるか?」
「…うん」
「そうか。友達と遊ばないのかい?」
「仲間外れにされているからね」
「せっかく来たのにそれじゃつまらないね」
「うん」
「じゃ、おじさんと話でもするかい?」
「…うん」
霊と呼ばれる存在が近くにいる時、キーン…とした感じの音がする。
それは耳で聞く音ではなく脳に直接響く波長というか、そんな感じ。
キーンとした波長を私も発していて、私が自分の波長を霊の波長と合わせると視える。
ラジオを聞く感覚に似ている…のかな。
霊の存在に気付いても、視たくない場合は自分の波長を合わさないようにする。波長を限りなく小さくし消すようにするのも手。
但しある程度、強い霊や一部の意思強い霊は、生きている人間に自分の波長を合わせてくる。その時に悪い霊だと金縛りにあったり体調が悪くなってしまう。
このおじさんは自分から私に波長を合わせ話しかけてきた力強い霊だけど、悪い
そして、ホテルにも
修学旅行最終日に「私に付いてくる?」と聞いたけど「この土地が好きだからここに居るよ」と言うのでそこでお別れになった。少し寂しく思ったものの、幽霊は土地に愛着を持ちやすいから仕方ない。私にとって修学旅行唯一の楽しい思い出は
そんなふうに私は人間より幽霊や物怪、精霊との付き合いの方が多い。
…私に視る力が無ければ今頃、自殺していたかもしれない、といつも思ってる。
これがなければ私は孤独だからね。
中には嫌な幽霊も居るし厄介なでももあるけれど、私には必要な力。
でも、
変な人扱いをされ場合によっては精神病も疑われてしまうよね。
だから私は基本、それを
極々少数の、そういうのを信じてくれる友人にだけは言っているけれど、それより他には絶対に言わず、隠し通すと決めている。
そして。
この力は視たり話したり以外、嫌な人をあの世へ行かせないよう肉体は無事のまま中身だけ害するのもできるからね。
私をイジメた人達は当然、地獄送りにしてあげた。
臭い煙を振り撒き歩くバカも地獄送りだよ。
歩道でベルを鳴らし歩いてる私をどかす自転車乗りも地獄へご案内。
殆どの人は死んでそれで終わりと思ってるけど違うからね。
人間として生きるより遥かに長い向こうの世界を知らないし伝えたとしても信じない。
私はこの世界で恵まれていないから、他人に冷たくなれる。
でも、
「新月お兄ちゃんが気になるのはわかるけど考え込まないよ〜」
「ゆっくりするなら途中で止まっているゲームをしたり見かけているアニメを見たりするといいんじゃない?」
考え込んでいる私に
「そうだね」
謎解き系のゲームは
食べ物の形を模したクッションにも物怪がついていて、名前はチーケーさん。
それを抱き寄せ枕にし、楽な体勢で横たわってゲームを始めた。
「僕を枕に使うのは歓迎だけど、高さが体に合ってないから時間には注意してね」
「わかった」
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