俺みたいなネクラ陰キャがオタクに優しいギャルと付き合うなんてそれなんてSFwwwwwwwww

天開佐助

オタクに優しいギャルは存在しない

現代よりもサブカル文化が台頭した2xxx年、迫り来る超高齢化社会の波に対抗すべく、政府はオタクに優しいギャルの量産を始めた。日々を癒すインスタントな太陽、俺たちの理想のカノジョたる『オタクに優しいギャル』(強調)はサブカル文化に触れた若者の理想を体現する存在となったのだ。

オタクに優しいギャルの性格、好みや嗜好を伴った人格のAIを作り、それを試験管培養の肉塊の未成熟な脳みそに埋め込む。そうして十月十日暖かい南の海のようなエメラルドグリーンの培養液につけておけば、理想のオンナノコの形になる。人体工学や医療の最新技術を埋め込んだギャルの完成!未来のオンナノコの成分表示はお砂糖とスパイスと素敵な何かではなく肉塊と微量な貴金属の塊とエメラルドグリーンの培養液だ。

ピンクブロンドのロングヘアに甘い色を湛えた色素の薄い潤んだ瞳は、ほどよく健康的なペールオレンジの肌の下にドギツイエメラルドグリーンの血液が通ってるとは思えないほど一見して人間的である。

化粧に関しては本AI人が「メイク?あ〜なんかめんどいから簡単にしかやってないよ〜」と話すように取り決められているため女慣れしてないオタクくんたちもにっこり100点の笑顔だ。

(女性に見られたら突っ込まれるであろうが実際はその本AI人はそれが語る以上に何もしていない、生まれた時からレーザー印刷ですっぴん風ナチュラルメイクを施されているからである。)

その他の特徴として、首元には今どきこんなのぜってえ付けねえだろ!と突っ込みたくなるハート型のネックレスがいつも輝いている。

そもそも本物のギャルはこんな子供みたいなネックレスなんて多分つけてないし、ナチュラルメイクなんてしない、これは多分に含まれたぼろきれやカタツムリ、子犬の尻尾で出来た俺たちのフィクションの産物なのだろう。

これは未来における国家ぐるみの…「オタクくん?なに書いてんの?」


ノートから顔を上げると本AI人こと同じクラスのオタクに優しいギャルがによによと口に笑みをためて正面からこちらを覗き込んできた。

胸元でハートの形のネックレスが夕日を受けて煌めく。

最終下校時刻10分前を切った今、教室には自分と彼女二人しかいない。


なぜ、どうして彼女が自分の前に突然現れたのか理解も追いつかないまま呆然としていると、白い腕が伸びてきて机の上の書きさしのノートを無慈悲にも掻っ払っていった。それはあまりに速い動きであったために自分には妨げることすら許されなかった。


彼女は緩やかに巻かれた明るい髪を耳にかけて、亜麻色の視線をノートの文字列に滑らせる。自分みたいな陰の者がそのオンナノコの動きを無理矢理に止める勇気は出なかった。故にじっとりと嫌だという意志をその動作を見つめることで伝えようとしたが、彼女には効果が無いようだ。


ノートから頭を上げた彼女が人好きのする可愛らしい笑みを浮かべる。

ナチュラルメイクの施された顔はいつも通り寸分の狂いもなく完璧であって、それがひどく違和感を与えた。

脳みそにガンガンと警報が鳴り響く、自分が女慣れしていない故に尋常じゃないほど緊張しているのだと必死に思い込ませた。


「オタクくんってさ、たしか頭だけはよかったよね。ただの妄想でもここまで当てれるのはすごいよ。将来は小説家とかになったり?ま、無理なんだけどさ。」


混乱する自分を置いて彼女は口を動かす。

意味がわからない。当てた、とはなんだ。

その時ようやく二つの瞳が合った。

片方は怯えを孕んだものであり、合ってしまった視線を逃そうと試みるも、もう一方の嫌に爛々と輝く瞳が目をそらそうとも常に視線の先を捉え続けた。

まるで緻密な機械のようなそんな光を目に入れた彼はそのまばゆさに動けなくなってしまった。

目が合い続ける。彼女から逃げられないと悟った瞬間に砂糖菓子のような甘い声が意識の外側から聞こえた。


「オタクくんたちの言葉では、えっと…なんだっけ…」


オタクくんの口から意味のない言葉が漏れる。

そんな様子をなんともないように、彼女がオタクくんの頭に右手を置いた。


「該当領域について検索中…あ!そうそう!勘の良いガキは嫌いだよ…だ!」


彼女は手から電撃を放った。

あまりに強い刺激のために瞬きするよりも早く息が止まる。

一瞬跳ねた体はそれ以降だらんと肢体を垂らしたのみでピクリとも動かない。


「周りの好意を受け入れず、穿った視点でものを見て、孤立こそが美徳だと自らの行いを正当化する。マ、せめてアタシの再三の忠告を聞いとけば、オタクくんも長生きできたろうに。現実は無情だねえ。」


死体には目も向けずに彼女は取り出した端末のキーをぽちぽちとあまりに速いタイピングで押していく。

一通りの操作が終わり、端末をしまった後に彼女はぽつりと呟いた。



あっそうだ、対象が消えたからアタシも破裂しなきゃじゃん。


すっかり影を落とした教室にはもう動かない肉の塊と任務を完了させたソレしか存在しない。

間髪入れずに瞳の光が消えたソレの口から無機質な音声が流れる。


Connect with the government.

loading…

connect check.

Activate self-destruct system?

y/n

yes

Please enter the System Code

System Code :50C878


accept.


Self-destruct system activated.

Goodbye, again.


突如バツンッと大きな何か電子機器が無理やり切断されたような音が空間に反響した。

すでに肉塊となった彼の上に鮮やかなエメラルドグリーンが撒き散らされる。

その瞬間、翠の血液が滴るソレは瞬時に人の形から解きほぐされて意味のない肉塊へと成り下がった。

彼女と彼の存在した記憶もその瞬間に脳みそから放たれた毒電波によって何事もなかったように立ち消えて秘匿されるだろう。

これで今回も終わりだ。

翠の肉塊に包まれた貴金属は潰えかけた意識の中、何百回もの前の一番最初のバージョンの自分に刻まれた何の意味もないコードを口ずさむ。


さよなら世界、また十月十日後に会いましょう。

翠の海からインスタントな電子の太陽は今日も登る。

まだ見ぬオタクくんと出逢うために。

ハートのネックレスを揺らしながら。

繰り返す繰り返す。

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俺みたいなネクラ陰キャがオタクに優しいギャルと付き合うなんてそれなんてSFwwwwwwwww 天開佐助 @tenk41

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