33話 このアイテムは違う用途で売れましたとさ
作る商品の方向性が決まったので片方の情報を1度まとめてみる。
まずは水中関連のアイテム。主な用途として水中での移動の補助的な感じで作ろうと思ってる。
ここで作りたい商品のライバルとなる商品の確認もしておく。
今、世に出回ってる水中関連のアイテムは、まず呼吸補助のアイテム。これは色々な種類があって、魔法によるものだったり、植物を加工したものだったり、普通に酸素タンク背負って行ったりするものだったり。てか最後の以外は昔俺が作ったやつだ。あの時はダンジョンに水中エリアが出てきて暫くは攻略が滞ってた。呼吸アイテムを皆で作ることになったけど、酸素タンクは仕組みが分からなかったし、調べるよりも新しく作った方が早かった。
呼吸アイテムに関しては作る必要は無いだろうな。現状需要に対して十分な供給がある訳だし。
次に移動に関するアイテム。まずはアイテムじゃないんだが、装備につけれる効果として水中抵抗軽減がある。が、少し高いしここにリソースを割くのも勿体ないし、水中専用装備ともなると作らないパーティーの方が多くなるだろう。となるとこれはライバル商品にはならないか。
というか水中移動に関するアイテムって少ない。多分だがほとんど需要がないんだろうな。スキルで泳ぐ方が楽だし速いもん。
だがほとんど需要がないということは少しはあるということ。それこそロンドさんみたいな装備をつけてる人はスキルを使ってもまともに泳げない。聞いた話によればダンジョンから引き返す時にもいちいち装備外して泳いでるらしい。だからこそ俺が重戦士諸君の期待に応えなければ。
そこで俺が考えたものがある。 まずそもそもとして先程は挙げなかったが、重戦士用の水中移動アイテムは1つだけ存在している。それは水中ジェットパックだ。だがこれには大きな欠点がいくつもある。
1つ目は値段。高い。以上。
2つ目はかさばる。背中に装着するタイプと足に装着するタイプが今のところ存在するが、背中タイプは狭いところに行けない。足に装着するタイプは昔に発売されたのもあって分厚く、単純に歩きずらいらしい。
3つ目はバッテリー。ジェットパックだけじゃなくて大きなバッテリーも背負わなくちゃならない。足にジェットパックを装着しても背中に大きなバッテリーを装着しないといけなければ意味が無い。ただこれに関してはジェット時間を一瞬にしたり発電式にすれば案外何とかなりそうだ。
4つ目は欠点とは言えないが操縦の難しさ。威力から方向転換やらを戦闘中にやるのは思ったよりも難しい。それも普段はしない水中戦でだ。ただこれに関しては慣れれば利点にもなるのでそこまでではないかな。
ちなみにこれを改良した簡易ジェットがある。一瞬だけ大きな力で推進力を獲得し移動するというアイテムだ。結構売れたが変な方向に行くことが多かったし、飛んだ後位置が水流でズレることもあった。そもそも足場に移動するならいいが、味方を守るためにモンスター目掛けて飛ぼうとしたらモンスターが移動してただ何も無いとこに突っ込んで行っただけ、という悲惨な結果に終わることもあったらしい。これは重戦士の1種であるタンク系としては避けたい結果だ。つまり緊急移動的な役割しか果たさなかった。
ここで俺は考えた。じゃあ吹き飛ばないようにグラップリングすればいいじゃないかと。いや、勿論今まで出てなかったってことは出来なかったってことは分かってる。
1番難しいのは多分ロープだ。ロープを固定する部分は粘着系アイテムを使えば何とかなるだろう。つまり切れずに軽く、長く水中で使えるものを使えばいい。そんなものは水龍種の髭…は安価に収まるわけが無いので、魚鱗蜘蛛の糸しかないな。そしてここまでは皆たどり着いたはずだ。
魚鱗蜘蛛の糸は比較的に簡単に取れ、ある性質を持つので水中服でよく使われる。その性質とは、水を吸えば糸が強固になるという性質だ。
その糸は現実で使われるワイヤーよりも強度を誇るし、縦にかかる負荷に恐ろしく強い。が、明確な弱点がある。それは糸を張れば張るほどその糸は細くなり横からの力に弱くなることだ。水中服に使う用途なら張ることがないので問題ないのだが、伸ばした状態が戦闘中に起きる時点で切れる可能性が高くなる。その時点で意味が無くなる。
俺も魚鱗蜘蛛の糸の弱点を克服できないかと今まで試行錯誤してきたが、どれも失敗に終わってしまっていた…のは昔の話である。
その弱点を補う方法を見つけたのだ。その方法として使うのがなんとスライムボディである。
スライムボディは衝撃を大きく吸収できるので、魚鱗蜘蛛の糸を保護するにはとても役立つ。現状の実験としても余程の攻撃か一定以上の斬撃でないと切れなかった。水中というのもあってそのふたつの攻撃のハードルも高いものとなり、さらに切れにくさに拍車がかかった。
元々この方法は案としてはあったのだが、死んだスライムを魚鱗蜘蛛の糸に付けることが出来なかった。水を吸収する魚鱗蜘蛛だからスライムボディもくっつくと思ったのだがただただ落下するだけだった。それを解決するのに役立ったのが[スライム養殖士]を取得する上で必要になった[スライム加工士]のスキルだ。
ということで重要な素材が揃ってるわけだし早速作ってみるか。
☆
構想と素材はあったので作るのに時間はあまりかからなかった。
という訳で実に3時間という高速タイムで完成したアイテムがこちら、腕の下に装着するグラップリングアームのアイテムと、足に装着する限りなく薄くしたジェットだ。試作品テストルの名づける。
このアイテムの使い方は、まず腕から発射されるロープが小型ジェットにより超高速で発射され対象のものにひっつく。それを巻くようにして自身も引っ張られるようにその位置に行けるようになる。その時に一瞬だけ足からジェットを出すことにより高速で移動できるようになる。一昔前に流行った巨人を殺戮する漫画の立〇機動装着みたいなものだ。
そしてジェットは一瞬だけの使用をすることが多いのでバッテリーの減りも抑えられるし、少しなら連続使用も可能だ。また歩くことで装置に取り付けられた羽根が回転し発電を可能にしている。素晴らしいエコだ。
という訳で早速水中に潜って使用の試用をしようと思うのだが、ここでゲストをお呼びしている。幼なじみのリアさんだ。
「なるほど。だから私が呼ばれたの?」
「だって俺重装備なんか装備したら歩けないし…」
昔、敵の攻撃を一切受けなければ無敵では?という思いで最強の防御力とスキルとカウンターを搭載した防具を作ったのだが、装備したあと一歩も動けず、戦闘地に赴くことも無いまま泣く泣くギルドの倉庫行きになったのは苦い思い出だ。きっとあの無敵丸君も誰かが有効活用してくれてるに違いない。
「そういえばSTRは普通なんだったね。それでどう使うの?」
「使い方は簡単だ。まずそこの岩に向かって手を向けてくれ」
「こう?」
「そしたら神経接続をしてるから後は飛べと念じるだけだ。そうすると高速で糸が射出される」
「わぁ!ほんとに飛んでった。結構早いね」
「まぁ陸だからな。その糸の先には粘着性の素材がついてるから対象に引っ付くようになってる」
余談だが最初は突き刺さるようにしようと思っていたのだが、威力が弱いと刺さらないし、強すぎても刺さった場所が壊れて外れるし、そもそも刺す場所によって左右されるのは使いにくいので粘着性にした。
「このネバネバしてるのってあのキモイ幼虫のやつ?」
「よく分かったな。あいつって相手にはネバネバの粘土の高い液体を吐きつけるけど、自分には全く効果がないだろ?なんでかなって思ったらあの幼虫って特殊な電磁波をまとってるみたいで…」
その電磁波をこの装置に組み込むことで、必要な時にだけ引っ付くように信号を送れるようにした。
「そうしたら後は回収するように念じたら糸が引っ張るように自分を持ち上げてくれるようになってる。……あ、ちょっと待ってまだ使うなよ!」
「え?何か駄目だっ………」
ブチッ!っと音がして魚鱗蜘蛛の糸は呆気なく切れてしまった。
「え、え?え」
「魚鱗蜘蛛の糸は水を吸うまではただの糸と変わらないって言うの忘れてた。そもそも地上だったら浮力もないし、装備が重すぎるままだから引っ張られないんだよ…」
俺のテストルは水中で使われる前に無惨に破壊されてしまったのだった。
ちなみに補修したテストルVer.2は安全に作動したので問題は無かったのだが、リアには「これ戦闘よりもアトラクション目的で人気出るんじゃない?」と言われてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます