30.5話 とある人狩りへの応報 後編
情報屋か。噂では最低でも10万くらいのマーニからしか情報が買えないとかそんな話がある。10万マーニと聞くだけなら普通に感じるかもしれないがただの情報1つに10万だ。それが嘘か本当かはさておき少なくともそんな噂が出る程の単価の高さはあるはずだ。
「言っとくが俺はそこまでお金がある訳じゃないぞ」
「君の懐具合はだいたい把握してるよ。一応言っとくけどこのままじゃ君、この国じゃ生きていけないよ?少なくとも2国くらいは離れないと」
「チッ…それでどんな情報をいくらで売ってくれるんだ?」
「そうだね…君に何が起きたかとそれをしてる集団についての情報を300位でどう?」
「300万!?ざけんなたけーよ。ぼったくってんじゃねぇ!」
「それ程の相手ってことだよ。まぁ相場ならそうだったんだけど今回に関しては相手の要望と初回割引ってことで70万マーニでいいよ」
300万も高いは高いが一気に230万も落ちるのもおかしくないか?ドアインザフェイスと言うやつか?それに相手の要望ってのも引っかかるな。
「まだ高いだろ………あー!分かったよ買う。買えばいいんだろ!ほら受け取れよ」
「まいど〜じゃあ教えてあげるよ。あ、聞き逃しても後で言われれば資料渡すから大丈夫だよ。
コホン。まず最初に今君には王国のほぼ全ての店舗で君に対しての一切の売買が禁止されてる」
「全てって…いや実際今日行ったとこは何も買えないとこばっかだったが」
「まぁ正確には王国の上位的な立場の商店や企業、卸売店に命令が出されて、そこから連鎖的に君への売買が禁止されたって流れなんだけどね。だからこの国の末端とか完全な個人営業店とかだったらまだ買えると思うよ」
つまり今回の経緯はどっかの誰かが上の連中に俺に対象にした命令出した。そこがまた下の連中に指示を出すことによって、下の連中も上の連中のご機嫌を伺わないといけないから、どこもかしこも売買ができなかったわけか。
「そういう事か。つまりこれをした相手ってのはそんなところに指示を出したり出来るほどの相手って事なんだな。それに闇市でも無理ってなると商店とかだけじゃなくて、ここのスポンサー的な立場のやつも了承するくらいの相手ってことか」
「そういうこと。君って思ったよりも頭が回るんだね。じゃあ次にその肝心の相手なんだけどそれは…」
「それは?」
「とあるギルドだね」
「…………それだけ?こっちは金払ってんだぞ。言えることは全部吐き出せよ」
「70万で言えるのはここまでかな。知りたいならさらに80万くらい持ってきてね」
「んだと!」
「まぁまぁまぁ。落ち着いて。実はね君にいい話があるんだよ」
「また金をせしめるつもりか?」
「いやいや、情報屋ってのはね情報を売ることが基本的な収入源なんだけどね、情報を売るには情報を持ってないといけないんだよ。
じゃあその情報の集め方ってのはね組織が自ら集めることもあるんだけど…」
「情報の買取ってことか…それで俺からなんの情報を買いたいんだ?売れる情報なんで少ししかないぞ」
俺が売れる情報なんて俺が持ってるユニークの情報くらいか?後はPKする過程で集めた敵の情報くらいか。後者はなんなら人によっては削除してたりするしまともなのがあんまり残ってるかわかんないな。
「個人的にはその少しの情報も気になるんだけど、今回は別の情報が欲しいんだ。それとさっきの情報の交換をしよう。なんなら君がこうなった原因もサービスで教えてあげるよ」
「なんだよその情報ってのは?」
「じゃあ契約成立ってことでいいんだね。」
そう言って情報屋は契約書を提示してきた。これを守らないと破った側に結構なデメリットが起こる。デメリットの大きさは契約書の種類にもよるが今回のは結構上の方だな。
特に騙されるような内容でも無いしここはサインしておいても問題ないはずだ。
「……よし確認が取れた。じゃあ教えて貰うよ。聞きたいのは君が今回売ろうとしたその首飾りについてなんだけど」
「??この首飾りがどうした?この首飾りの情報なんて知ってるだろ?てか非公式wikiをまとめてるのはあんたらだろ」
あのサイトは多分ほぼ全プレイヤーが使ったことあると思う。あそこは有志の書き込みではあったが殆どが情報屋じゃないかって言われてる。
「勿論聞きたいのはその事じゃないよ。君はその首飾りを誰から、どんなパーティーから奪ったんだい?」
わざわざそれを聞くってことはあのパーティーには何か秘密があるのか?
「……つまり今回の俺がこうなってる原因って、もしかしてこれのせいか?」
「その通り。君がこの首飾りを奪ったパーティーが多分今回の一番の原因だね」
「多分?多分ってことは確定じゃないのか?」
「依頼者はまた別にいるからね。それで?パーティーについて教えて貰えるかい?」
「教えるったって言っても戦闘も起こって無いし忘れかけてるぞ」
俺は基本的には相手の情報を調べてから戦闘を仕掛ける。勿論調査具合は相手によるので今回の場合だとあまり調べてないし、なんならデータも1人以外捨てちまった。
「覚えてる限りでいいからさ」
「まぁそれが契約だしな。えーっと…まず名前は1人も覚えてねぇな。PKする上でさして重要でもないしな。
そんで1人は確か騎士系統の職だったはずだ。そこまで上手くなかったし始めたてなんだろ。
後は魔法職の女が1人いて、ちゃんと鑑定してねぇし確かめても無いが多分あれはエルフだな。MPとか魔法の強さからしてハイエルフの線だって有り得る。
もう1人は多分弓使いだった気がするが戦闘はそこまででどちらかと言うと指揮がメインだったな」
「ふん…なるほどね」
「そして最後の一人に関してだがこれははっきりと覚えてるな。まだそんなに上手くなかったが、一応1番戦闘を任されてる感じだったんで鑑定アイテムを使って鑑定した。その時にステータスが明らかに高かったな。あれは何かしらのユニーク持ってると思うぜ?ステータスを上げる何かとか逆境系か。」
正確には全員一応鑑定自体はしてるんだが、雑魚鑑定だったし特に情報は得られなかったな。
だがさっきも言ったが特にあの[双剣士]だけは上位アイテムでしておいた。
あいつは見た感じだとステータスがジョブとレベルに対して相当高かった。あの高さはコンバートボーナスでもない筈だし。ジョブ2つ分とバフ合わせたくらいのステータス値で、初心者にはありえない数値だったな。
そういえばあいつは[双剣士]なのに大剣を2本装備していたな。あれは上位職での解放だったはずだ。となると鑑定偽装を使ったか、もしくは武器の方に秘密があるのか?いや、やっぱりユニークスキルか…?
「ふむふむ、あと何か知ってることとかはある?」
「あとはなぁ……見て分かると思うがあのパーティーのみでオーガロード倒したことが1番じゃないか?普通は勝てないしあんま削れないからな。
あのユニーク持ちがいたってのもでかいとは思うが、ちゃんと調べて戦略とかを考えてると思うな。まぁ今は配信とか解説動画なんてありふれてるしな」
俺も最初の頃は解説動画にお世話になった。ぶっころまるさんとかPKPK(ピカピカ)チャンネルとかは今でも見てるしな。
それにしてもレアエネミー遭遇までちゃんと対策してることに関しては褒めざるおえないな。俺も1回出会ってしまったことがあったが相当強かった。あの時は1人で挑んでたら負けてたかもしれねぇ。
「分かった。まぁ情報としては十分だね。約束通り君を困らせていた組織のことを教えてあげるよ」
「ああ頼む。あれだけのことが出来るんだ。どっかの高位貴族の恨みを買ったか?それとも王国連盟とか王女ファンクラブとかのギルドに知り合いがいたか?いや闇市にも手を出せるならカジノリッチクラブのほうか?」
ファンクラとか闇市撲滅しようとしてたしな。カジリッチの方が可能性としては高いが、あのパーティーが知り合えるレベルか?リア友だったのか?
「うんうん。いい読みだね。じゃあ答え合わせだ。君を懲らしめた犯人の正体は…」
「ゴクリ…」
「……エデンだよ」
「…………」
「……エデンだよ」
「……?は?え?エ、エデ、エデン?それは下位組織とかパクリとかの?」
「いやあのエデンだよ」
………???
エデンってあのS帯ギルドのか?マイソロジーの?いやいやありえないだろ…
「なんで俺がそんなギルドに目をつけられないといけないんだよ。冗談言ってんじゃねぇぞ」
「俺も最初は目を疑ったよ。いや耳か?君が狙ったパーティーにリア友でもいたんじゃないの?」
まさかあの騎士のやつが言ってた知り合いってのが!?本当だとしたらマジでやばいんじゃ…
「顔色が良くないよ。そんな君に伝言がある」
「で、伝言?」
「返すべきものをちゃんと返す、それもちゃんと謝罪して。そうしたら見逃すって言ってたよ」
☆
「もう行っちゃったか」
出来れば彼のユニークについても少し聞きたかったけど、まぁしょうがないかな。
『おい、ササミ。聴いた感じどうだった?』
「まぁ特にアレに関係する話に進展はなさそうですね。ユニークの話が少し気になっただけです」
先輩からの通話にそう答える。実際こっちで調査してる情報と同じだし。
『じゃあやっぱり先日のアレは魔法職か弓職が怪しいのか?』
「まぁあのパーティーで限って言うならそうなりますね」
発端は先日俺たちのwiki担当のメンバーが、ドラゴンの情報集めのために戦闘をしていた時だ。
戦闘終盤ってところでドラゴンの頭を何かが貫いた。それもメンバーの誰でもない攻撃で。魔力的な何かで構成されたもので消失したそれはドラゴンを貫いて討伐してしまった。
幸い貢献度やパーティー外の横取りと判断されて討伐報酬はほとんど貰えたそうだが、情報屋としてはこれは見逃せなかった。
そんな時にこんな事があったもんだからそのパーティーが疑われている。それに今回のエデンの話だけでなくてもあのパーティー、初心者4人でオーガロードの討伐は不可能に近い。
つまりあのパーティーには実力を隠した誰かがいるんじゃないかと。そんな者を情報屋が調べない訳にはいかないんだとさ。
まぁ真実か間違いか、どちらにしても情報屋がこういうことを調べていくことはただの日常だ。
『おい、70万はまけすぎだろ!もっと金取れただろーが!』
「ひっ、すいません…」
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