30話 初心者狩り

「これは…俺ってばやっぱり超ラッキーじゃね?」


「だ、誰ですか?」


 9層からの入口から一人の男が入ってきた。ダンジョンのボスはリポップに時間がかかる。どんなボスでも最低5分はかかるはずなので、その間に別のパーティーが戦闘せずに次の層へ行く事が出来る。ダンジョン攻略では有名な戦力温存方法だが、多分こいつはそれ目的じゃなさそうだな。


(鑑定.EX)


 鑑定スキルはアイテム情報の他に相手の氏名が分かるがEX化を行うことでアイテムの詳細情報が増えるだけでなく、レベル差やステータス差なので相手のあらゆる情報を見ることが出来る。それに俺の鑑定は+値も相当高くなってるからそこら辺の補正も高いし、ユニークスキルのおかげでさらに補正がかかる。




 ルーカス・クーズー 職業 強奪王 Lv31

 サブ職業 山賊.宝盗団.盗賊.大剣士.魔剣士【炎】etc…


 ステータス

 ATK 2735(+750)

 STR 1869(+431)

 etc…


 ユニークスキル

 強奪の確意


 スキル

 強奪LvMAX 陰奪Lv2 ヒューマンキラーM エルフキラーS 初心者狩りetc…


 特殊ステータス

 奪力 453

 奪補正 213

 命中率 183


 特殊スキル

 強奪の秘奥 初者殺しetc…


 特殊称号

 新芽摘み



 これは…こいつずっと狙ってたな。しかも初心者を専門的に狩ってやがる。しかも多分こいつ初心者狩りにしては強い方だなー。

 メインの職業も多分ユニーク職かな。あれは多分ジョブの中でもカンストが99じゃなくて150のやつと見た。レア寄りだな。


「なぁお前ら。今オーガロードと戦ったんだろ?その素材全部くれよ」


「は?何言ってるんだお前?」


「何って?お前ら殺して奪うのが面倒臭いから渡せって言ってんだわ。今ならオーガロードの素材だけで許してやるって言ってんだよ」


 これは嘘だな。盗賊系スキルやジョブを使ってもそれだけの素材を全部奪うことは出来ない。1部だけしか奪えないがふっかけて来てるな。


「言っておくが俺たちは抵抗するぞ」


「あー、一応こっちも言っとくが俺はオーガロードよりも強いぞ。ただな戦闘するのも面倒いし正直いうとレア度が高いと奪うのが面倒臭いんだわ」


「だったら尚更抵抗した方が奪われるアイテムも少ないって事じゃないか」


「分かってねぇな。俺は目当てのもんが落ちるまでリスキルするって言ってんだよ」


 リスキルはある程度というか色んなリスクがあって結構メリットが少ないが、今回の場合だとメリットの方が大きいな。それに俺たちは初心者だから比較的しやすい。


「俺は狙ってるアイテムがドロップしやすくなるスキルを持ってる。ただ俺もそこまで労力は使いたくない。何より初心者をリスキルするだなんて心が痛む」


「よく言えたわね。どうせ最初からつけてたんでしょ」


「まぁそう言うなよ。思いのほか強そうなパーティーだったんでな。それよりだ、俺は労力をかけたくない。お前らはリスキルされたくないしあまり素材を渡したくない。そこで取引だ」


「なんだと」


「そこの金髪の嬢ちゃん。お前のアイテムひとつで俺は手を引いてやるよ。信用出来ないなら魔術契約書に書いてもいい」


「ヒナ、聞く必要なんてない。始めたばっかで少ないが俺の強い知り合いに助けて貰っても」


「ううん。これ一つで解決するなら渡してもいいよ。そもそも私たちには少し強すぎるから」


「そこのクソ騎士と違って話が分かるなー。じゃあ交渉成立ってことでー」


 そう言ってヒナから首飾りを奪って行ったあいつは転移結石でこのダンジョンの外に転移して行った。


「なぁ、何も出来なかった身で聞くのもあれだが本当に良かったのか?」


「うん。元々売ってもいいって考えるくらいの品だったし。何よりアヤちゃんの素材は取られなかったしね!」


「もう、私のことは気にしなくても良かったのに」


「何より今の私たちじゃ抵抗出来ずに一瞬でやられてたよ」


「ボス戦で消耗してたからな。まぁとりあえず一旦帰って祝勝会でもするか。あと今回でヒナにできた恩はこれからちゃんと返していくら」


「気にしなくていいのに」


 そうして俺たちはボス部屋の後にある転移陣から転送地点を登録してダンジョンを後にした。


 それよりあのクズだかカスだかみたいな名前の男。あいつの好きにされたままってのは面白くない。何より実力隠して大事なアイテムを取られたままにしておくってのも罪悪感がすごいし、ちょっとこのままってのもな。少しくらいは痛い目にあってもらわないと。


 あいつに嫌がらせをするために俺はメール機能を起動してある人物に連絡を送った。

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