第16話 誰か居るよ…?

家を作る事を趣味にして何年か経った。


作っては、壊し、改造し……満足の行く出来になったものは【収納】していったが…


かなりストックが溜まってきたので、いくつか気に入った“作品”を並べて展示しておく事にした。


趣味のフィギュアを飾っておくみたいな感じだな。


まぁサイズがデカいだけで、プラモデルを組み立てているのとやってる事は変わらん。実用できるという点では生産性があると言えるが……結局、普段使う家は決まったのが一つだけで、他に作った家屋敷はほとんど使うことはないのだ。まぁ、他のバリエーションを制作する過程で思いついた改良点は、その一つに反映ささせているので、まったく意味がないという事もないが。


ただ、建築物はでかいので、並べて飾っておくにしても場所を取る。なんとなく、最初の拠点であった泉の周辺は自然のままあまり改造したくない気がして、住宅展示場は数百メートル離れた場所に作る事にした。


誰が見るわけでもない、見せる気もない謎の住宅展示場だが、自分で並べて比較できるのは良い。並べてみると、新たな改造点が見えてくる事もあったしな。


……このままにして数千年経って誰かに発見されたら、謎の古代文明とか言われるかも?


城とか宮殿とか言うようなサイズのものまであるが、それは大型物件エリアに、比較的小さい家はまとめて個人邸宅エリアに分けて展示した。大型物件エリアはかなり広いスペースを使ってしまったが、森はそれ以上にどこまでも広く見えるので、その程度は問題はないだろう。と思ったのだが……


新しく作った家を置くため、個人邸宅サイズの展示エリアを少し広げようとした時、声を掛けられた……。


『何をしてるの…?』


思わず体がビクーンとなってしまう。正直、かなりビックリした。なにせ、何年も、野生動物か魔物以外、誰にも合わない生活をしていたのだ。誰かに話しかけられるなど予想外過ぎた。


しかも……魔物が近くに来る時もあるのでいつも周囲には警戒していたはずなのに、魔力感知に反応がなかったのだ。


何者?!?!


だが、振り返ってみても誰も居ない…。


「…………誰にゃ?」


周囲の魔力を探ってみても、特に誰かが居る気配はない。あるのは植物だけ……植物?


するとまた声が聞こえた。声の主は一人ではない、複数居るようだ。


『誰か居るよー?』

『だれー?』

『何してるのー?』

『木がなくなったよー?』

『私達の森を壊さないで!』

『なにー? 何か置いてあるよー大きいのー』


誰が喋っているのかはすぐに分かった。花だ。森の木々の間に生えている草があり、その上部に咲いている花から声がしてくるのだ。


なるほど、植物は警戒の意識から除外していたので、感知できなかったわけか。


鑑定してみた。


――――――――――――

【アルラウネ】

別名「囁く花」「ざわめく花」

マンドラゴラの近縁種。

知性はあるがそれほど高くない。

(上位種になると高い知性を示す場合もある。)

――――――――――――


まるほど、植物系の魔物ね…。最初の泉から離れるに連れ、野生動物や魔物にも徐々に出会うようになったが、植物系の魔物は始めてた。しかも喋る! 知性がある生物も居るだろうとは思っていたが……まさか植物(系)だとは意外だった。


ただ、知能は高くはないと鑑定結果には書いてあるが…会話は成立するのか?


『何してるのー?』


「住宅展示場を作ってるにゃ」


『ジュータク?』

『テンジ?』

『ジュータクってなに?』

『ジュー! タクテン!』


「住宅ってのは、住む家の事にゃ」


『住むいえー?』

『いえーい!』

『家って何ー?』

『住むって何ー?』


動物なら巣があるものだろうが、植物には家の概念は分からないか…


「……もしかして、森を切り拓くのは迷惑にゃ?」


アルラウネA「メイワク?」

アルラウネB「メイワクって何?」

アルラウネC「メイワクですよ、決まってるでしょ」

アルラウネD「別にメイワクじゃないよー?」


「どっちなんだよ……会話が成立してるようで、やっぱりしてないか。知性はそれほど高くないようだな…」


アルラウネ(上位種)「失礼ですわね」


俺の呟きを聞いたからか、花達の後ろから別の花が現れた……というか生えてきた。そして花の蕾が開き、中から女が出てきたて言ったのだ。


アルラウネ「この子達はまだ子供だから、難しい事はよく分からないだけです」


現れた女は上半身は裸で、頭部には花が咲いている。下半身は花の“ガク”がタイトスカートのように巻き付き足は見えない。そのまま茎は地面から生えている。


アルラウネ「あまりジロジロ見られると恥ずかしいですわ」


身長は小さめだが、体系はそれなり……胸には膨らみがあり、人間で言えば思春期の少女という感じだ。


…いや、思春期の少女ならもっと体は成熟しているか? 分からん、何せそんな年代の女の子の裸など見た事ないからな。ただ、昔より発育がよくなっていて、中学生くらいならもう体はしっかりできあがっていると聞いた気もするので、前に居る半裸の花の魔物の体型は小学生高学年くらいかも? ロリコンなら大喜びしそうだ。ロリコンでなくとも男だったら目のやり場に困るか……まぁ俺は猫だから関係ないにゃ。


やはり、性欲というのは持ってる肉体の本能に振り回されているだけなんだろう。実際、眼の前に居る半裸の少女を見ても、俺には感ずるものは皆無だった。だがそう考えると……俺はもしかして猫に欲情する可能性が?!


いやいや。俺はそもそも“猫”じゃない。……多分。それに、違う種族に生まれ変わったとは言え、中身(魂)は人間のはずだしな。


一瞬浮かんだ気色の悪い妄想を掻き消し、特に目を逸らす事もせず相手を見据えたまま尋ねてみた。


相手は鑑定でアルラウネの上位種と出ているから、今度は話が通じる可能性が高い。


「ここら辺はお前達の縄張りにゃ? 森を切り拓いたのはまずかったにゃ?」




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