第22話 入場待ち列最後尾に舞い降りてみた

新たに発見した街道を辿っていくと、やがて街が見えてきた……。


異世界あるあるの城郭都市である。魔物が存在する世界なのでそうならざるを得ないだろう。


門には入場待ちの列ができていた。俺はゆっくりと地上に降りていき…


…列の最後尾に着地してみた。


前の人間が、いつの間にが背後に並んでいた俺に気付きギョッとした顔をした。


「なんにゃ?」


人間「え? いや…


…あんた、獣人…だよな?」


「……タブン?」


あまり言葉をしゃべらない生活をしてきたので、ちょっと声がひっくり返ってしまったので慌てて発声練習をする。


「あーあーこほん……


……多分?」


人間「あ、ああ、そうだよな…」


確かこの世界には普通に獣人やエルフ、ドワーフなどの亜人がいるはずなので、獣人など不思議ではないだろうに…。


あ、もしかしたら獣人が少ない地域で珍しいのか?


「獣人は珍しいにゃ?」


人間「ああ? いや…どっちかと言うと、多い方かな」


「なら、にゃんで驚いているにゃ?」


人間「いや、だって…」


『おい、何をしている?!』


その時、ちょうど前の人間の入城チェックの番が来てしまい、その男はそそくさと行ってしまった。


前の男は身分証のようなモノ見せすんなり門の中に入り、すぐに俺の番になる。


身分証など持っていないが、なんとなく並んでみただけなので、別に入れなくとも問題はない。まぁ異世界あるあるの入城料を要求されるパターンだろうと予想し、盗賊のアジトで見つけた金を亜空間収納から取り出し服のポケットに入れてある。


(考えてみれば、ポケットがある生活をするのはこの世界に来てから初めてだな…)


門番「ん? 獣人…か?」


「他に何に見えるにゃ?」


門番「いや…」


だが、妙にジロジロ門番に見られる。


服だって着てるし、人語を話している。先程の男の話では獣人は多いという事だったのだから、驚くような事ではないと思うのだが…。


まぁ街の住民ではないから仕方がないのだろう。


「入城料はいくらにゃ?」


門番「あ? …ああ、街の住民以外は銅貨3枚だ」


やはり入城料を払うという事で正解だったようだ。


門番「街の住人ではないよな?」


「今日初めて来たにゃ」


門番「そうだろうな…」


「これで足りるにゃ?」


俺は銅貨と思しき硬貨を三枚取り出して渡した。あっていたようだ。


門番「ああ、じゃぁこれにさわれ」


門番が机の上に置いてある水晶玉を指さした。


「これはなんにゃ?」


門番「知らんのか? どんな田舎から来たんだよ…。これは、触れると犯罪歴があるかどうか分かる魔導具だ。犯罪者が触れると赤く光る。もし光ったら面倒な事になるぞ」


「へぇ…」


俺は肉球を水晶玉に押し付ける。


……何も起きない。


それはそうだろう、この世界に来てから人間の住む世界と関わったことはなかったのだから。


盗賊のアジトや朽ちた馬車から金品を物色した事がバレるかも? と一瞬思ったが、すべての生物の行動を見通すような神掛かった道具があるとは思えない。おそらく指名手配犯を登録している程度の話だろう。


門番「…よし。それで、街には何しに来た?」


「買い物にゃ」


俺の前の人間はそんな質問されていなかったように思うが、街の住人でないなら仕方ないか。


門番「この街に住む気か?」


「んにゃ。買い物したら帰るにゃ」


門番「そうか……入っていいぞ」


門番は終始微妙な表情であったが、気にしない事にした。この世界の人間を見たのは初めてなので、色々細かいニュアンスや事情が分からない。


彼らからしたら色々違和感を感じるところもあるのかもしれんが、どうせ人間と深く関わる気はないのだから、気にする必要はないだろう。


俺は街を見て回り、買い物などできたらして帰るだけの事だ。


別に、人間の世界と離れて生きてきて何の不自由もなかったが、ちょっとはあったらいいなと思っていたモノはあるのだ。


まずは市場に行って調味料を買った。これまで自分でも天然の調味料は工夫して来たが、せいぜい野菜や果物をすりつぶして作ったソースに岩塩を混ぜるくらいだったのだ。


まぁそれでも素材の旨味だけで十分満足はしていたのだが。調味料があれば料理? の幅も広がるだろう。


それから、服も買った。古着屋?に俺のサイズにあう子供用の服が結構あった。シャツと短パンを何着か、それにブーツも買った。


買い物をしてみて、街の物価と貨幣価値も分かってきた。盗賊とその被害者? のおかげで俺は結構な金持ちのようだ。


ただ、使えば減っていく。まぁ今後、必要になったら稼げばいい。いくつかの店で魔物の素材を買い取りしているのを見た。俺は亜空間収納の中に、これまで狩ってきた魔物を結構な数収納しているのだ。これらが多分売れるだろう。


ただ、試しにひとつ出して、市場の人間に買い取ってくれないか尋ねたが、出した素材が高級過ぎて市場ではとても買い取れないといわれてしまった。


どこなら買い取ってくれるのか尋ねたら、商業ギルドでなら買い取ってくれるかもしれないと言うので、場所を教えてもらい行ってみた。だが…


商業ギルドの中に入ろうとしたところ、門番に立ち塞がられてしまった。


門番「獣人が何のよ……獣人? だよな? 何の用だ?」


「素材を売りにきたにゃ」


門番「猫人がか…? ネズミなど獲ってきても買い取ってもらえないぞ?」


「そんなんじゃないにゃ。何だか失礼な奴だにゃお前…」


門番「ああ?! 何か文句でも~」


その時、背後から声を掛けてくる者が居た。


『どんな獲物を持ってるんだい?』


門番「これは…! マスター・ロデス!」



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