白兎姫は十四歳だった。

 長い黒髪は腰のあたりまで伸びている。

 その顔はいつも笑顔。

 肌は雪のように白くて、なんとなくいつもぼんやりとしているような顔をしている。

 自然が大好きで、外が好きで、いつもお屋敷を抜け出して、庭でどろんこになって、遊んでいる女の子だった。

 歌を歌うことが大好きで、(でも恥ずかしいから)隠れて、小さな声で、いつも一人で歌を歌っていた。


 夜になると白兎姫は布団を用意して、いつものように薄明と一緒にその布団の中で眠りについた。

「おやすみなさい、薄明ちゃん」

 と白兎姫は言った。

 でも薄明からの返事はない。

 薄明は布団の中であっという間に深い眠りについていたからだった。

 そんな薄明の大きく口をあけた寝顔を見てくすっと白兎姫は楽しそうな顔で笑った。

 白兎姫はそっと薄明の小さな手を握った。

 薄明ちゃん。

 あなたは私に会うためにつらい雪の降る山道を一人で孤独に歩いてこの家までやってきてくれたのに、私はあなたに感謝の気持ちを伝えることもできないでいます。

 ごめんなさい。

 本当にごめんなさい。

 眠りにつく前に白兎姫はそんなことを思った。

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