探していたもの

子どものころから探していた。

だけど「それ」が何かはわからなかった。


夜、鉄橋を走り抜けていく電車の灯りが、幹線道路で信号待ちするたくさんのクルマの灯りが、そして、マンションや雑居ビル、家々の灯りが、私の胸に切なさと懐かしさを呼び起こさせた。

まるでそのなかの一つに、探していたものがあるかのように。


あるいは、遠くから聞こえる海鳴りのような風の音が。高い建物から見える遠くの景色が。


ある日私は、あなたに出会った。

私は「それ」を探さなくなった。

私が探していたものは、きっとあなただ。

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