からす鳴く声似つかはしはるのかぜ

【読み】

からすなくこゑにつかはしはるのかぜ


【季語】

はるのかぜ(春の風)〈春〉


【大意】

カラスが鳴き声をあげるのも似つかわしい春の風である。


【付記】

日本各地でふつうに見られるハシブトガラスとハシボソガラスは留鳥であって渡りをしない。ただし、カラス科で最大のワタリガラスは冬期に少数が北海道に渡来するらしい。


なお、「からす(烏/鴉)」は無季。「はつがらす(初烏/初鴉)」は新年、「かんがらす(寒烏/寒鴉)」「かんあ(寒鴉)」は冬の季語。


ときに、わたしはカラスの鳴き声を「ね(音)」ではなく「こゑ(声)」としたい。カラスにはどこか人間くささを感じるので。


【例句】

枯枝に烏のとまりたるや秋の暮 芭蕉

旅烏古巣は梅になりにけり 同

何にこの師走しはすの市にゆく烏 同

ひごろ憎き烏も雪のあした哉 同

木枯こがらしや烏もなかぬ柿のへた 一笑いっしょう

いなづまにおそはれて飛ぶ烏かな 正秀まさひで

遠浅の華表とりゐぞ寒き夕烏 凉菟りょうと

雪曇り身の上をなく鴉哉 丈草じょうそう

ほのぼのと鴉黒むや窓の春 野坡やば

紅梅や月を捨行すてゆくあけがらす 同

星合ほしあひや銭とる橋の夕烏 桃妖とうよう

暮てゆく一羽烏や初しぐれ 諷竹ふうちく

五六羽の鴉下り居る枯の哉 也有やゆう

かげろふに小首かたむく烏哉 嘯山しょうざん

うき事はしらじ師走のとび烏 樗良ちょら

野のすみれしづかにあゆむ烏かな 成美せいび

陽炎かげろふにめしを埋る烏哉 一茶

飛のいて烏笑ふや雪礫ゆきつぶて 同

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