こたつなき宿を出でてやねこの恋

【読み】

こたつなきやどをいでてやねこのこひ


【季語】

ねこの恋(猫の恋)〈春〉


【大意】

こたつのない住まいを出てネコの恋が始まるのであった。


【付記】

「猫の恋」は初春(=立春からひと月)の季語とされる。1年のうちもっとも寒い時期にあたり、こたつを仕舞うには早いようである。それに鑑みると、最初からこたつを出していなかったと見るべきか。日本の冬はこたつであり、ネコはこたつで丸くなるものであるから、典型的な日本の冬とは言いがたそうである。


なお、「こたつ(炬燵/火燵)」は冬の季語。


【例句】

きりぎりすわすれ音になくこたつ哉 芭蕉

住みつかぬ旅のこころや置火燵 同

炬燵出て古里恋し星月夜 言水ごんすい

瓜むいた様に寝ころぶこたつ哉 凉菟りょうと


猫の妻へついの崩れより通ひけり 芭蕉

猫の恋やむときねや朧月おぼろづき 同

両方にひげがあるなり猫の恋 来山らいざん

京町の猫かよひけり揚屋町 其角きかく

五月雨さみだれや又一しきり猫の恋 白雪はくせつ

猫の恋不破ふはの関屋はあれにけり 李由りゆう

猫の恋初手から鳴て哀れなり 野坡やば

人はいざ猫よりかるし猫の恋 沾圃せんぽ

羽二重の膝に飽きてや猫の恋 支考しこう

三味線の皮のうき名や猫の恋 木導もくどう

うらやましおもひ切時猫の恋 越人えつじん

草をむ胸安からじ猫の恋 太祇たいぎ

おもひの耳に動くや猫の恋 同

恋々て猫のおなかやはるの月 大江丸おおえまる

耳うとき婆々はしらずや猫の恋 梅室ばいしつ

恋猫や主人は心地例ならず 夏目漱石

淡雪や通ひ路細き猫の恋 寺田寅彦

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る