2曲の延長戦
阻止しようとするアナウンスの声に向かってあきちゃんがさらに煽る。
『うっせーよ。音楽が何なのか知りたかったら黙って聴かないと損しちゃうよ?』
僕達が演奏を開始すると観客はスタンディングオベーションで大歓声。
僕達の延長戦を肯定する大歓声だった。
『演奏聴きたいお前らー!!ここまでおいでー!
間近で最高な演奏聴かせちゃうから気絶すんなよー♡』
あきちゃんはステージギリギリのところを指さして観客を間近まで来させる。
多くの人がステージ際ギリギリまで押し寄せてくる。
止めに入ろうとする先生達は押し寄せる観客でステージに上がれない。
こうして4曲目の演奏が始まった。
ステージギリギリまで押し寄せみんなで手を上げながら縦ノリで盛り上がる会場。
先生は人が密集しすぎてステージにとても上がって来れない。
4曲目の演奏は2曲目を遥かに凌ぐ大盛り上がりだった。
演奏すればするほど盛り上がる会場。
曲を重ねる毎にファンになってくれる人が増えてる実感がる。
会場全体を味方につけた僕達の演奏はまさに無敵だった。
音楽が多くの人を動かし、ルールに反する僕達を肯定しているのだ。
音楽の力は何よりも強かった。
『アンコール・アンコール』
4曲目が終わった後も興奮がおさまらない会場。
まだまだ僕達の演奏を聴きたい人が大勢いて、アンコールという合唱となり会場に響き渡る。
さすがに止めに入るためにステージに上がってくる先生達。
『もっと!もっともっと!!
こんなんじゃ足りないっ!!』
あきちゃんは先生を無視してアンコールを煽り続ける。
あきちゃんが煽れば煽るほど会場のアンコールは大きくなっていく。
『先生達がこのアンコールを認めたら、あき達が演奏出来る曲の中で1番自信のある最高の1曲を披露するねっ』
会場全体を味方につけて先生をねじ伏せようとしてしまうあきちゃん。
『アンコール・アンコールっ!!』
響き渡るアンコールは益々音量を上げ、会場全体の大合唱となる。
ここまで来たら止めに入る先生が悪者にすら見えてしまう。
先生は焦り、数名集まって話し合いをしている。
そしてまとまった結果を発表した。
『彼らの演奏に対する会場の期待は中学生のレベルを逸脱しています。
今後将来に対する期待値や、ご来場の皆様の期待にもお応えするべきとの判断に至ります。
この5人が演奏後に、“必ず逃げずに”先生と話をしに来てくれると約束するならこのアンコールを認めようと思います。』
会場は再び大歓声に包まれて、会場内の人々が一丸でアンコールが通った事を喜ぶ。
『もちろんっ!
ちゃんと怒られに行くから任せてよっ♪
先生アンコールの許可ありがと。』
めちゃくちゃ明るく、堂々とした態度のあきちゃん。
『それじゃあ1番得意で自信がある曲行くからねっ!!
みんな大好きだよーーーっ♪』
僕達は課題曲として練習したあの曲の演奏を始めた。』
僕達の正真正銘の最後の曲は会場を熱狂に包み込んだ。
観客みんなが五感の全てで僕達の演奏を受け止めようとしてくれる。
ステージから見る人々の表情はどれも恍惚としていて脳内は演奏に支配されていた。
こんなに多くの人が僕達の演奏に夢中になっている事に驚いた。
これだけの人に通用すると知り、自信が溢れてくる。
大人が決めた、学校のルールすら曲げてしまう力があったのだ。
生まれて初めて自分が起こした行動に力を感じた瞬間だった。
あらかじめ予定していた5曲の演奏を無事やり遂げたのだ。
後に聞いた話だがこの後演奏を予定していたバンドは5組、どのバンドの演奏もそれほど盛り上がらなかったと聞いた。
僕達が盛り上げすぎてしまったのだ。
僕達は演奏が終わった後、先生達に連行されて体育館を後にした。
体育館にいた大勢の人の拍手や声援を受けながら。
『シッカリ怒られてこいよー』
『また演奏聴かせてね〜』
『最高だったよー』
『ライブ絶対行くから誘ってねぇ』
体育館から連行される僕達に送られた声はどれも暖かな声だった。
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