第3話 ギャルとお試しで付き合うことになった日②

「ねぇ、天城君」

 不意に空見が話しかけてきた。


「ん?」

「私たち付き合ってみない? 一カ月限定のお試しとかでもいいから。どうかな?」

「本気で言ってるのか?」

「もちろん。本気だよ」

「そっか」

「ダメ?」


「ダメなわけないだろ。ただ、ちょっと信じられなくてな。学年の二大美人と呼ばれている空見が俺なんかと付き合ってみたいって言ってくれていることがさ」

「天城君って自己評価低めだよね。天城君意外と女子生徒から人気なんだよ?」

「そんなわけないだろ」

「そんなことあるんだよ」

「その割には一回も女子から告白されたことないんだが?」

「それは私が告白させないようにしてからね」

「なんでそんなことしてたんだ?」

「そんなの決まってるじゃん。天城君のことを誰にも取られたくなったからだよ」


 そう言った空見は少し頬を赤くして、そっぽを向いた。


「なるほどな。つまり空見は俺のことを独占したかったわけだ」

「ちがっ!?」

 慌てたようにこっちを見た空見に俺はニヤッと笑みを浮かべた。


「何が違うんだ? 空見は俺のことを独占したかったから、他の女子たちが俺に告白しないようにしたんだろ?」

「もぅー! そうだよ! そうですよ! 好きな人を独占したいと思うの当り前じゃん! 何か悪い!?」

 開き直った空見は早口で捲し立てた。


「いや、全然。好きな気持ちを独占したいって気持ちは分からなくはないしな」


 失恋をした日に他の誰かと付き合うとか何が一途だよと思われるかもしれないが、もう俺の中で月並への恋心は終わっている。

 キスをしているところを見た時に。

 だから、ここからは新たな恋だ。


 空見に対して今はまだ恋心を抱いているわけではないけど、これから先も共に時間を過ごしているうちに恋心を抱くようになるだろう。

 なにせ俺はチョロいからな。


「それでお試しで付き合ってみるかって話だったよな? 仕方ないから空見の彼氏になってやるかな。一カ月だけ」

「なんか上から目線なのがムカつくんですけど~。どっちかっていうと失恋した天城君を慰めてあげるために私が彼氏になってあげるんだからね! そこのところは間違わないでよね!」

「じゃあ、付き合うのやめとくか」

「ヤダ! 天城君と付き合いたい! 私の方が立場が下でもいいから付き合いたい!」


 俺が本当に付き合うのをやめると思ったのか空見は駄々をこねる子供のように首を横にブンブンと振った。

 え、なにこの可愛い生き物。  

 可愛すぎてヤバいんだが。


「付き合うのやめるってのは冗談だからもう首振るな。そんなに振ってたら首取れるぞ」

 俺がそう言うと空見は首を振るのをピタリとやめた。


「じゃあ、私と付き合ってくれる?」


 お試しの一カ月間とはいえ、空見と付き合えるなんて、本来なら俺の方から頭を下げてお願いしないといけないレベルだ。

 そのくらい空見慧は人気者で、俺なんかでは手の届かない存在だ。

 そんな空見が俺のことを好きだったなんて信じられなかったが、今にも泣きだしそうな目で見つめられたら信じないわけにはいかなかった。


「こんな俺なんかでよければ、よろしくお願いします」

「本当に? 本当に私と付き合ってくれるの?」

「そう言ってるだろ?」

「嬉しい! 大好き!」


 空見が俺の胸に飛び込むように抱き着いてきた。

 その勢いがあまりにも強すぎて俺は空見に押し倒されるように後ろに倒れた。

 空見の顔が至近距離にある。

 こんなにも近くで空見の顔を見るのは初めてだ。


「ねぇ、キスしてもいい?」

「……」


 耳元でそう囁かれ俺の思考は一瞬停止した。

 停止したが俺はすぐに思考を再開し、聞き間違いかと思ったが空見のことを見た。そして、どうやら聞き間違いではないということを理解した。

 空見はお酒にでも酔っているかのような、とろんとした目で俺のことを見つめていた。


「さ、さすがにそれはまだ早くないか?」

「ダメ? 天城君の嫌な記憶を私のキスで上書きしてあげるから、ね?」


 そんな欲しがるように言われたら俺の意思なんて簡単に吹き飛んで行ってしまう。

 正直、失恋をした今の俺に躊躇う理由なんて一つもない。

 だから、俺のことをこんなにも好きでいてくれている空見にファーストキスをあげるのも悪くないか。


「分かったよ。初めてだから優しくしてくれよ」

「なんかそれエッチじゃない?」

「うっさい」

「安心して、私も初めてだから。一緒に気持ち良くなろ♡」

「そっちの方がエッチだろ」

「もぅ~。うるさい口だな~。そんな口にはこうだよ♡」


 そう言って空見は俺の口を塞ぐようにキスをしてきた。

 満天の星空の下、空見と交わしたファーストキスはきっと死ぬまで忘れることはないだろう。

 俺と空見はしばらくお互いを求めるようにキスを何度もした。


☆☆☆


 次回更新2/5(月)


 タイトル「未定」

 決まり次第変更します。 

 すみません。

 次回作もお楽しみに~

 好きな作品にいいね、コメントお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラブコメの始まり 夜空 星龍 @kugaryuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ