ごめんね

梅春

第1話

 伊豆に帰って来た。大嫌いな伊豆に。


帰ってきて、伊豆で仕事をしている。今は安らかな気持ちだ。仕事も思ったよりも楽しい。旅館の接客業なんて単純な仕事の繰り返しだし、嫌なお客も少なくないはずだから、屈辱的だと思っていた。


でも、違った。予想していたような嫌なことも多くあった。大きな旅館内の人間関係の複雑さ、オーナー一家の横暴(それでも昔に比べるとかなりおとなしくなったそうだ)、老若男女国籍関係なく一定数現れるクレーマー・・・


 そういったものと小さく戦いながら、それでも弱い立場同士の者たちの結束や、すれ違った程度のお客たちとの温かな触れ合い、繰り返される仕事の中で積み上げられる小さな達成感、それらは東京で非正規として使い捨てられていたときには得られない小さな小さなご褒美だった。


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