空にキラキラ! 第二シーズン。

大創 淳

第一章 揺れる白銀。

Episode 001 それは、九つの頃に始まった?


 ――陰キャになったこと。ある日突然。



 言葉が、脳内で真っ白になった。小学四年生の新学期。


 会話が成り立たなくなったの。クラスメイトたちとの。



 原因を捜すにも、空白……そこだけが、飛んでいる記憶。この春休みの出来事の中。ただ手に入れたのは、白銀のペンダントだった。揺らすと、操ることができるアイテム。


 人形を操るように、人を操る。


 思いのままに、思いのままに。


 でも、満たされない心。私が求めているものとは違っていた。


 その原因が、皆が皆、上辺だけ。私のことを無視しているの。……そして、私の名字が変わった日。それがそう。ちょうどこの頃。小学四年生の新学期……


「トナカイ、トナカイ」と、


 揶揄われる日常。無視されるよりかはマシとも思えた。……でもね、それがエスカレートして色々と書かれるようになった。ノートに沢山の……罵詈雑言の文字たち。


 失った言葉。


 そして家では、殴られ蹴られ……


 私の居場所なんてなかった。相談できる人さえも。だから手に入れたの。涙の数と傷の数。身体の傷よりも心に傷。白銀のペンダントを揺らすことにより、成し遂げた復讐。


 家庭を崩壊に導いた。新しいパパを懲らしめてやった。ママを操って。――それが私の能力となった。催眠術という何の特技もない私が、唯一持ち合わせられたチート能力。


 そしてもう……


 私は帰る場所さえなくなった。親戚も盥回し。どの親戚にも嫌われていた。初めから最後の砦しかなかったのだ。それが、ママのママ。つまりはお祖母ちゃんだった。


 名字は『戸中となか』のまま。それが、ママの旧姓だから。私の名前は『糸子いとこ』だ。






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