繋がれた無力

加賀 魅月

第1話

三歳みとせ。生きるのは、つらいか?」

 口にした後に、俺は何を言っているんだと思った。何を、言わせようとしているんだ。

 彼女はきっと肯定する。彼女が否定できないことを、俺はどこかで確信していた。

 けれど、三歳の答えが聞きたくて、取り消す言葉は続かなかった。

 視線を落とすと、視界の縁に透明な管が映る。

 これがこの子を殺そうとしている。

 繋がれた腕は衰弱しきっていて、ただ無力のみを示していた。

 ――もう、死ぬんだって。困っちゃうね。

 その時の彼女の顔を思い出すたびに、苦しくて息ができなくなる。今の三歳は、それと似た表情をしていた。

 静寂が鳴り響く。耳が痛い。

 唇が微かに動く。彼女の葛藤が。俺の強欲が。時を止めてと叫んでいる。

 俺はどうすればいいのだろう。出すべき答えは未だ見つからず、ただ時間だけが経過していく。きっと俺は間に合わない。答えに辿り着くことはできないだろう。

 今度こそと言わんばかりに意を決して、三歳が息を吸い込む。タイムリミット。彼女はここから、始めなくてはならない。

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