残された水

残された水の話をしよう


世界的な災害が訪れた

被害は甚大だ、なんとか助かった人もいる

もう少し、もう少しの間待てば、救助が来るらしい


ただ水が足りない、なんとかかき集めた

なんとかなる量らしい、でもカツカツ、少しでも配分を間違えれば誰か死ぬ


1日目、なんとか耐えた

2日目、なんとか耐えた

次の日、知恵の回らない人が水を2人分飲んでしまった

仕方ないことか、それすら、この極限状態で、

全て把握して、対策しておけって話ですか


それは置いといて

結局これで1人死ぬことが決まってしまった


当然話し合いになる

でも意味はない、だって話し合ったとて、水は増えないから

むしろ喉が渇くだけだ


でも1人死ぬのは変わらない

優しい人が言った、「僕が飲まない、引き受ける」と

みんな躊躇った、だって目の前の人が死んでしまうから

でも少し考えて、受け入れた

だってみんな死にたくなかったから



ついにその日が来た、あの人が死ぬ



と思ったら、「死にたくない、だから水を飲ませて」と懇願してきた

誰もすんなり頷けない、だって自分は死にたくないし、

代わりに死ぬ人は探せないから




結果どうなったでしょう

暴れるあの人をみんなで痛めつけて、殺してしまいました


残りの人はみんな助かりました

ニュースにもなる、けどあの人の訃報は流れません

なぜでしょう、残りの人には消したい事実だったから


なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ


不可解な点がたくさんある、なぜ?


なぜ、優しい人が損をするんでしょう

自己犠牲の精神を持つ人は彼しか居なかったのだから

彼こそ生き残るべきなのに

最後には、痛めつけられる?理不尽だ


なぜ、2人分飲んだ人は罰せられないのでしょう

極限の環境じゃなくとも、世界にはどうにもならないことを

平気でやってのける人がいる

なぜ彼らが罰せられずに、優しい人が死ぬのか

おかしい、おかしい


なぜ、訃報が流れないのでしょう

真実より優先されることがあるらしい

自己保身でね


嗚呼、綺麗な世界

なぜもう少しでも綺麗な世界になってはくれなかったのでしょう

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