第36話 索敵
-シエルスの町 東門-
町の外ってこんな感じなのか…
てっきり、だだっ広い草原とか荒野が広がってるだけかと思ってたけど、田んぼや畑が広がってるんだ…
まぁ、さすがにこれだけの広い土地を鉄とはいえ柵で囲むのは至難の業だものな。
…ていうか、自分で思うのもなんだけど、もう夜で暗いってのに、よくこんなにもはっきりと見えるよな。
これも魔眼のおかげか…
「さて、我が君よ。
あやつらをどうする?
本来なら我が魔法で大多数を消し飛ばし、その生き残りをシルヴィーが始末するというのがいつもの手筈なのじゃが?」
「あやつら?」
「主ー、魔物なら森にいるよー」
シルヴィーにそう言われたスラッシュはかなり先にある森に目を凝らす。
確かに何かが少し動いているような気がしないでもないな…
となると、あれが魔物か…
にしても、なんでエレオノーラ様やシルヴィーは敵があんな遠い所に居るのに、屋敷の中からでもわかるんだ?
「う~ん…魔物がどんなものか見てみたいからなぁ…
とりあえずオレは襲われても大丈夫みたいだから、森のほうに行ってみるよ。
みんなは、もし町に入ってきそうな魔物がいたらそれを倒してもらってもいいかな?」
「我は構わぬが」
「主が言うならそうするー!」
「では、私はご主人様に付いていきます」
「え?
アリシアちゃん?
危なくない?」
「その点は問題ないと思います。
それに私が傍にいれば、多少は魔物についての情報もお伝えできるかもしれませんので」
アリシアの提案を受け、スラッシュは躊躇している様子であった。
だが、何も問題はないと言わんばかりに平然とした顔をしているエレオノーラとシルヴィーを見て、彼女を同行させることにしたようだ。
そして、2人は魔物が潜んでいるであろう森を目指し農道を歩いて行く。
「それはそうと、アリシアちゃん。
ちょっと聞きたいことあるんだけど」
「はい、なんでしょうか?」
「あの2人って、なんでこんなにも遠い場所に魔物がいるってわかるの?
…てか、もしかして実はアリシアちゃんもわかるって感じで、実はオレだけがわからなかったりする?」
「あ、そのことですね。
心配なさらなくても大丈夫ですよ、普通はわかりませんので。
エレノアさんに関しては、あれは分身と言っていいんでしょうか…?
とにかく、自分の髪の毛からコウモリを生み出すことができまして、それで色んな所を監視してるみたいです。
どういう原理なのか?は全く理解できませんけど、きっと固有のスキルだと思います」
髪の毛ちぎって分身を作るとか…
西遊記の孫悟空かよ!
「じゃあ、やっぱりエレオノーラ様もオレと同じようにユニークスキルを持ってるってことだよね?
だとすると、シルヴィーも?」
「いえ、あの子に関してはスキルじゃないと思います。
耳が良いのと匂いに敏感だというのがあって、少し離れた場所だったらそれで気付くみたいです。
ただ、今回にようにかなり離れてる場合は、きっと野生の勘みたいなものが働いているんだと思います」
野生の勘ねぇ…
確かに生肉とか喜んで食べてるくらいだから野性的ではあるよなぁ。
でも、まだ子供だし、それにサバイバル生活してるわけじゃないのになぁ…
オレが作った設定上だと、一応は神獣だから、そういった潜在的な能力があるのか?
「で、アリシアちゃんは?」
「私の場合は、あの2人みたいに遠くの場所のことまではわかりません。
ですが、ある程度の距離でしたら。
この体を得てからも、前世の能力を継承しているようで魂の色や形が見えたり、
それが放つ…
なんと言いますか、わかりやすく申し上げるとオーラのようなものを感じることができますので」
前世の能力って…
まぁ、今更驚くこともないか…
本当に人形に魂が宿るくらいだからな…
…そう考えると、大半の人間は全く気付かずに生活してたけど、実は地球って超常現象の宝庫だったりしたのか?
「そっか…
なんかゴメンね。
オレだけ、索敵能力みたいなのがなくて…」
「ご主人様が謝られるようなことは何もありません。
その役割は私たちがすれば良いだけのことですし。
それに、もし気になさるようでしたら、この世界には普通に魔法が存在しますので、そういった索敵魔法を習得するというのは如何でしょうか?」
魔法かぁ…
そういや【MP】のステータスもあるから、きっと使えるようにはなるんだろうけど…
それに、リアもこの世界でこれから手に入れていくもの、みたいなこと言ってた気がするし。
ただ、このステータスだけは0のままで全くイジれなかったんだよなぁ。
「ちなみにだけど、魔法ってどうやって覚えるの?
あの謎の言葉を覚えないといけないとか?
オレ、全然魔法が使えないみたいなんだけど」
「その辺りの説明はユリアちゃんのほうが詳しいと思いますよ。
私たちの場合は、なんとなくこういった魔法が使えるはずって感じで、使おうと思ったら勝手に知らない言葉を発しているだけですから」
「つまり、オレの場合は、この世界のヒューマンが魔法を学ぶのと同じ過程で習得しないといけないってことね」
「最初から備わっていないのでしたら、その可能性が高いのかもしれません。
それに、これまでに困るような事態が発生しなかっただけで、実は私たちも必要そうな魔法があれば手に入れたいと話をしていたんです」
「魔法って手に入れるものなの?
なんか修行するとかじゃなくて?」
「練度を上げるにはそういった方法もあるみたいですけど、最初にその魔法が使えるようになるためには、魔導書を手に入れる必要があるみたいです」
「魔導書…ねぇ…」
せっかくの異世界だ。
いつかは魔導書を手に入れて魔法くらいは使えるようになってみたいな。
「あ、そういえば、さっきも面接してて思ってたんだけど。
この世界の言葉とか文字って…」
「…ご主人様、お気を付け下さい。
魔物がこちらに向かってきています」
森の近くまで歩いてきた2人は歩みを止め、これからやってくるであろう魔物を警戒した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます