第45話 父親の心境は複雑です
三ページ目と四ページ目を開いた瞬間、古文書から使い方が頭に流れてきた。
まずは三ページ目だけど枠が二つある。ここにはカードを二枚セットすることができるようだ。
そしてセットすることで二枚のカードを合成することができ、新たなカードを作ることが出来る。ただし合成したカードは消耗品でなくとも、一度使用すると消滅してしまうみたいだ。
これはかなり使えるページだぞ。一度だけという縛りはあるけど強力なカードを作ることができそうだ。
次に四ページ目だが、ここには五枚の枠があった。
どうやらこのページは、カードを保護することができるようだ。
現状、カードは最後のページに保管されている。バトルになれば使いたくなくても、このページのカードを引かなければならなかった。だがこの四ページ目にセットしとけば、バトル中に使われることはないようだ。
そしてもう1つ。⭐4のカードに関してはバトル中に使用する時、その⭐分のカードを犠牲にしなければならない。
つまりは最上級ポーション⭐4をバトルで使う時は、ポイズンスネーク⭐2のカードを二枚目犠牲にするか、もしくは大岩⭐1とパワーブースター⭐3の犠牲が必要になる。
もちろん犠牲になったカードはそのバトルが終わるまで、使用することが出来ない。
強力なカードは簡単には使えないということか。
だけど合成も⭐4以上のカードもかなり強力なため、使い方次第では俺の力になってくれるだろう。特に合成はその後カードが消滅してしまうから、使い方は気をつけないといけない。
とりあえず俺は最上級ポーションの一枚を最後のページに、残り二枚を保護のページにセットしておいた。
トントン
カードを古文書にセットした後、突然ドアがノックされる。
「ルリシア様、ユート様、夕食の準備が出来ました」
「わかりました。すぐに行きます」
もう夕食食の時間か。
なるべく早く皇家の墓に行きたいけど、夜道は危険だ。
今日中に皇帝陛下から許可書をもらって、明日の朝一番で旅立つとしよう。
「ユートくん、ご飯だって。行きましょ」
「うん」
俺とルリシアさんは食堂へと向かった。
そして食堂に到着すると、既に二人座っているのが見えた。
「ユートくん、私の隣が空いてるわよ」
「小僧は私の隣に座れ」
えっ? 食堂に着いた早々これですか。
皇后様と皇帝陛下のお誘い。俺はどっちに座ればいいんだ。
「渡す物があるからこっちにこい」
渡す物って皇家の墓に入る許可書なのか? ここでフィリアさんの隣に座ったら機嫌を損ねてしまいそうだな。
「じゃあせっかくなので、今回は皇帝陛下の隣に座らせてもらいます」
「あん⋯⋯ユートくんを取られてしまったわ」
「ごめんなさい」
皇后様がすごく悲しそうな表情をしている。せっかく誘ってもらったのに申し訳ないことをしてしまったな。
だが悲しそうな表情は一瞬のことだった。
「それならもう片方の空いてる席に私が移動するわ」
フィリアさんは立ち上がり、笑顔で俺の隣に行こうとする。
しかし俺の隣の席は、既にルリシアさんが座っていた。
いつの間に移動したんだ。気配が全く読めなかったぞ。
「お母様残念でした」
「さすがルリシアね。抜け目ないわ」
「早い者勝ちです」
何の勝負だよ。とりあえず二人は置いといて、俺は皇帝陛下にもらえる物をもらおう。
「これが皇家の墓に入れる許可書だ」
「ありがとうございます」
今までの言動からして、素直にもらえないと思っていたけど、そんなことはなかった。
「それと⋯⋯」
皇帝陛下が俺に近づき耳元で囁く。
「ルリシアは連れていくな。明日の早朝一人で皇家の墓に行くがよい」
俺は皇帝陛下の言葉に頷く。
元より俺もそう思っていた。
ルリシアさんをわざわざ危険な旅に連れていく訳にはいかない。
皇后様の毒が完治し、自分の命をねらう者がいなくなったんだ。
もう城の外に出る必要はないはず。
皇帝陛下は続けて言葉を呟いた。
「それと⋯⋯一度しか言わん。ルリシアが――」
「えっ? いいんですか?」
俺は皇帝陛下の信じられない言葉に、思わず聞き返してしまう。
「本当にいいの?」
不安になりもう一度問いかける。
だが皇帝陛下は顔を背け、こちらと目を合わせてくれない。
「お母様、ユートくんとお父様は何を話しているのでしょうか?」
「ふふ⋯⋯さあ、男同士の話し合いじゃない」
「何ですかそれ」
「女の私とルリシアは知らなくていいことよ」
ルリシアはフィリアの言葉の意味がわからず気になっていたが、朝食が運ばれてきたため、そちらに目を奪われる。
「久々の家族揃っての食事だな」
今までフィリアさんや皇帝陛下が毒で体調が悪かったり、ルリシアさんはボルゲーノさんの所にいたので、叶わぬことだった。三人ともとても嬉そうだ。だけどその場に俺がいてもいいのかな? でも誘われているのに退出するのは失礼だよな。
俺はこの場で食事をすることを許されたと思い、夕食を食べ始める。
そして美味しい夕食を食べ終わった後、俺達はルリシアさんの部屋に戻った。
部屋に戻った後はお風呂に入り(またルリシアさんが乱入してきた)、同じベッドで寝ることになった。
そして夜が明けた。
日が出始めた頃。俺は眠りから目覚め、抱きしめているルリシアさんの手を剥がしベッドから降りる。
まだ早朝であるため、ルリシアさんは気持ち良さそうに寝ていた。
この寝顔を見るのも、今日で最後かもしれない。
「ルリシアさんと出会えて本当に良かったよ」
トアの病が治ったら、また会いたいな。
その時はトアを紹介するよ。
さすがに帝国のお姫様を連れ出す訳にはいかない。
俺は音を立てず着替えて、ルリシアさんの部屋を後にする。
そして皇家の墓へ行くため、俺はグランツヴァインの北門へた足を向けるのであった。
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